RPGツクールVX Ace製の作品『風と花曲のアンブレラ』に関する記事です。
穏やかで優雅な雰囲気の物語が楽しめる中編のRPGです。
グラフィック、BGM、ゲームシステム等、全ての要素が丁寧に作り込まれていると感じる作品で、難易度は易しめ~普通くらいだと感じます。
本編クリア時間は約9時間でした。
(裏ダンジョンクリアは+1時間ほどでした)
ゲーム概要
主人公のお嬢様・セシリーは、「風乗り」と呼ばれる英雄の末裔であり、自分の母と同じように人助けの旅に出ることを夢見ていました。
ある日、誰かの助けを求める声が、風に乗って聞こえてきたことをきっかけに、屋敷の窓から風に乗って抜け出し、旅に出ます。
本作は伝統的なRPGのシステムを基本としていますが、いくつか個性的なシステムが実装されています。
その中で主要なものについて、かいつまんで紹介していきます。
まず装備画面についてです。
単に武器や防具を装備するだけではなく、アビリティという攻略上重要な要素を付け替える画面でもあります。
防具と装飾品に関しては通常のRPGと同様に、お店で購入したり、宝箱やイベントをこなすことで新しく入手できます。
対して新しい武器は、改造していくことで強化します。
お店で基礎となる武器が何タイプか並んでおり、素材を消費してそれらを改造していきます。
キャラごとに、物理攻撃を重視したもの、魔法攻撃を重視したもの、バランス型などが用意されています。
それぞれのキャラに色々な役割を試させてみると、戦術の幅が広がり面白いです。
ジュエルは装飾品のようにパラメータをアップさせる効果がありますが、さらに複数のスキルを使えるようにする効果もあります。
使えるスキルの種類はそのジュエルのランクに依存しています。
ジュエルは改造していくことで強化され、使えるスキルも増えてきます。
ジュエルによって攻撃スキル、補助スキル、回復スキルなどの系統があるので、キャラの役割やアビリティとの組み合わせを考えて装備させていくと良いでしょう。
装備画面ではアビリティが3つ装着できますが、これはメニュー画面で「EP」を消費して習得していくものです。
EPはパーティで共有している値であり、依頼をクリアしたり、本を読んだりすることで増えていきます。
各キャラに、どんな役割を持たせるかという方針によって、優先習得すべきアビリティが変わってくると思います。
これをあれこれ考えていくのも、本作のキャラカスタマイズの面白さだと思います。
メニュー画面の「旅の手帳」では、現在のメイン目的と、依頼メモ(いわゆるクエスト)の親交状況が見られます。
次に何をするか分からなくなったときは、ここで確認できるので迷いません。
次は戦闘についてです。
本作の戦闘は、アクティブターンバトルです。
素早さに応じた速度でAPゲージが溜まっていき、満タンになった者から行動していきます。
スキルによっては、このAPを増減させる効果を持つものもあります。
スキルには、MPを消費するものと、「FW」(フィールドウィンド)を消費するものとがあります。
FWは、特定のスキルを使うことで場に蓄積されていき、1戦闘が終わっても引き継がれていきます。
MPを消費するスキルを使用していればFWは自然と溜まっていくので、変に温存せず積極的に活用していくのが良いでしょう。
なお、通常攻撃や防御をすることでMPは回復していくので、防御も重要な戦術になり得ます。
本作の戦闘では、状態異常が割と重要な位置を占めているバランスだと感じます。
敵を状態異常にするスキルや、味方の状態異常耐性は常に意識しておくと、戦いやすくなると思います。
感想(ネタバレ無し)
本編後の裏ダンジョンも含めて、無事クリアできました。
裏ダンジョンと言っても、とんでもない難易度のやり込みダンジョンというわけではなく、本編ラスボスの延長線上にあるくらいの難易度でしたので、そのまま自然にプレイできました。
本作はRPGとして非常に丁寧に作り込まれていますが、一番の魅力は、何といっても主人公のセシリーにあると思います。
どんな状況であっても、うじうじと悩むのではなく、お嬢様らしくエレガントに対応していきます。
時には無謀だと思うことでも、それを事も無げに成し遂げる実力が備わっているため、まさに無敵だという印象です。
他の人が大きな問題だと捉えているトラブルを、当たり前のように解決していくのは痛快でした。
対峙する相手が敵でも、自分のペースに巻き込み、相手を当惑させることはしょっちゅうです。
敵も味方も巻き込んで、最終的には良い感じに解決するというのは『水戸黄門』を彷彿とさせる気持ちの良いものでした。
ストーリーでストレスを感じることはなく、爽やかな風のような清々しいプレイ感が得られるのではないでしょうか。
難易度については、やや易しめ~普通くらいだと思います。
普通に習得するスキルを活用して戦っていれば、特に全滅することなくプレイできます。
ただし、一部の依頼については、着手できるようになった時点で挑むと、ボコボコにされてしまうものがあります。
そういった依頼については、とりあえず後回しにして、適性なレベルになってから受ければ問題ありません。
本編でのバトルで、レベル上げが必要になることはないのではと思います。
ストーリー上で強そうな描写がされている敵は、順当に強いので、その辺りは納得感がありました。
バフ・デバフ・状態異常が有効な戦闘バランスなので、その辺りをしっかり活用しないと、難しく感じることはあるかもしれません。
グラフィック・BGMについては、かなりこだわりが感じられました。
オリジナルの立ち絵をはじめとして、戦闘のドット絵が細かく作られており、後期スーパーファミコンの名作RPGを思い出します。
緑を基調としたマップはどれも美しく、終始穏やかな気持ちで探索していました。
(眼にも優しい)
BGMは非常に耳に残るものが多く、作品を盛り上げていたと感じます。
作中でセシリーがピアノを弾くシーンが多いためか、ピアノをベースとした戦闘曲も多く、全体として上品な雰囲気だったと思います。
雰囲気や難易度的な面で、ライトユーザーにも非常にお勧めしやすいRPGだと思います。
作品紹介のスクショを見て少しでもピンときたら、プレイして間違いはないのではと思います。
攻略メモ(ネタバレ注意)
本編ラスボス攻略例
倒されるとゲームオーバーになる戦いでは初めて全滅した、本編ラスボス戦の攻略メモです。
レベル上げの必要は特になく、全員LV29でした。
エメラの村の工房に戻り、強化できるジュエルは全て鍛えておくと良いかと思います。
結論から言うと、ジュエルによって使用可能となるスキルが、攻略の鍵を握っていると感じました。
生命のエメラルド・EXによって使用可能となる「フォレストワード」は、味方全体の防御・魔法防御を5ターンアップさせる魔法です。(『世界の合言葉は森』を連想しました)
僕の場合はセシリーにこの魔法を使わせており、バフを維持していれば苦戦しないと思います。
ピンチ時にはエレガントヒールでの全体回復を行い、余裕がある時は攻撃に参加させていました。
ロウは、お供がいなくなるまでは「月光の矢」や「マジェスティックルール」で攻撃します。
ボス一人になったら「赤薔薇の矢・乱れ射ち」や「エンペラーソード」でデバフを掛け、「ブラックエンペラー」で削ると良いでしょう。
ウィンリアも同じく、お供の敵がいなくなるまでは「ロイヤルブライト」で全体攻撃を行います。
敵が一人になったら、「ゴールドランス」で攻撃したり、エーテルホーンでMPを回復させましょう。
クリア後のダンジョン
クリアデータをロードしたら、青いブロッサムキーを拾って、空写しの塔の入口右の扉に使います。
そこから先へ進むと、裏ダンジョンが攻略可能となります。
裏ダンジョンの門番・火術師の幻影は、戦闘開始時に「火球ノック・千本」で激しい攻撃を行ってきます。
無対策だと瞬殺されてしまうので、パリィやグレース率を上げる装備・アビリティで固めて、開幕ラッシュを凌ぎましょう。
そこさえ凌げば、あとは通常のボス戦のイメージで戦えるので、フォレストワード等を駆使して戦います。
感想・スクショを添えて(ネタバレ注意)
屋敷の窓から抜け出すというと、ドラクエ4のアリーナのようなお転婆姫を思い浮かべます。
しかし本作の主人公のセシリーは、あくまで優雅に、広げた傘で風に乗って抜け出します。
このプロローグの1シーンは、本作のイメージを象徴するキービジュアルのように感じています。
酒場でピアノを弾くというシチュエーションは、FF5を思い出しました。
感想でも書きましたが、本作は後期スーパーファミコンソフトの名作RPGへのリスペクトが感じられました。
ピアノを弾いた後に、その演奏曲がそのままバトルのBGMになるような演出は格好良くて好きです。
特にこのバトルで流れる戦闘曲が耳に残っていて好きです。
曲名が知りたい…
セシリーの魔法が強いのは、風乗りとしての資質だからだと思います。
しかし、傘でなんでもパリィできるのは何故なのか良く分からないですが、剣術的なセンスも凄まじいのかもしれません。
敵モンスターであっても、自分の好きな分野であれば、分け隔てなく賛辞の言葉を送ります。
先入観なく、素敵なものは素敵だと言える屈託のなさが良いなと思います。
(HUNTER×HUNTERのゴンのように)善悪の頓着が無く、好奇心の赴くままに行動するのは風乗りらしいと言えるのかもしれません。
敵役であるゼヒュラも、良い味を出しています。
闘争を求め続ける魔族という存在でありながら、美しいものを愛するという、敵にも味方にもなり得そうなキャラクターで、とても好きでした。
セシリーの人柄に惹かれ始めている(と思われる)ロウは、自分の心をはっきりとは認識しておらず、とりあえずこういう言葉になったのかなと思っています。
といっても、この時点では恋愛感情とかそういうものではなく、セシリーの人としての魅力に惹かれているのだと解釈しています。
悪夢の中で戦う魔族戦のBGMは、他のボス戦でもしばしば使われていますが、緊迫感があって好きです。
初めてこのトリオと戦闘したときは、まだレベルが足らず、全滅させられてしまいました。
倒されて真っ黒に規制された死体があるというシチュエーションも相まって、結構トラウマでした。
おそらくこの3人の魔族は、ゼヒュラが離脱した王配下の四天王的なチームなのだろうと想像しています。
ヘビ女3姉妹の生き残りのスリューダは可愛かったです。
調子に乗り過ぎた姉たちが処分されてしまったのはちょっと可哀想ですが、やり過ぎてしまったので仕方ありません。
ゼヒュラですら困惑させる、自由なセシリーが本当に魅力的でした。
誰もが敵意や畏怖を持って接してくるであろうゼヒュラにとって、自然体で向き合ってくれるセシリーは新鮮だったと思います。
いわゆる「おもしれー女」だと思うのですが、ゼヒュラ自身も「おもしれー男」になる気がするので、変わり者同士が噛み合ったということになるのでしょうか。
強がりでも煽るのでもなく、本当に自然体でそう思っているであろうセシリーは、やはり最強だなと思います。
おそらくはゼヒュラを懐柔しようという計算があるわけではなく、純粋にお誘いをしているのだと思います。
もし計算であるのなら、ゼヒュラもそれを感じて態度を硬化させていたのではないでしょうか。
断られたら断られたで、では仕方ありませんねと戦う姿勢を見せるお姿も凛々しいです。
ぎこちなくティータイムに付き合ってくれていたロウが、打ち解けてきてくれたのは微笑ましかったです。
「またお茶しよ。」という言い方が、気取らないロウの人柄を表しているようで好きです。
敵も味方も、魅力的なキャラクターばかりで、ついついこの後どう生活していくのか等、気になってしまいます。
頭部に付いている他の眼も、にっこり笑っている形になっているのが可愛いです。
セシリーを全力で戦わせるのに、タイクーンの復活など必要なかったのだと思わされるシーンでした。
彼女であれば、確かにそうしてくれるだろうと信じられます。
ゼヒュラも彼女の人となりを最初からよく知っていれば、わざわざタイクーンを復活させようとはしなかったのかもしれません。
本能的に闘争を求める魔族である以上、馴れ合いによる和解という結末は望めません。
ゼヒュラは好きなキャラだったので寂しいですが、ここで斃れるのが最も彼らしく美しいと思う気持ちがあります。
最後、青い薔薇を部屋で生けてくれているのを見て、ゼヒュラが救われた気持ちになりほっこりしました。
ロウの満面の笑顔は、エンディングで初めて見たような気がします。
従者というより、相棒という感じがあって良い関係だなと感じました。
以下、クリア後です。
裏ダンジョン入口初挑戦です。
開幕千本ノックで全滅させられ「は…? イベント戦闘じゃないの?」と困惑しました。
この驚いている状態で静止している歩行グラが、FF5&6感があって好きです。
本編ではだいたい無敵のセシリーが、「ヒィ…」「…ガタガタ…」と怯える珍しいシーンなので印象深かったです。
「勝つと決めています。」という文字通りの勝利宣言がカッコよすぎます。
ジョジョ第3部のダービー戦を彷彿とさせられます。
呪いを解くために何かするのわけではなく、そのうち自然に解けていくだろうという考え方が、風乗りらしい楽観さで、セシリーらしく感じました。
呪いに囚われていても、それに完全に身を委ねていたわけではなかったゼヒュラとの出会いが、セシリーにそう信じさせたのであれば嬉しいなと思います。
本ブログで紹介しているゲーム系の記事まとめ
コメント