Toby Fox氏によって制作されたインディーゲーム「UNDERTALE」の紹介・感想記事です。
2015年にWindows・Macで発売されたあと全世界でヒットし、今ではSteam、Switchなど様々なプラットフォームで遊べるようになっています。
独特の世界観、個性的なキャラクター、ゲームを盛り上げるチップチューンなBGM、手に汗握る戦闘パートなどが特徴です。
ユーモアと残酷さが同居する雰囲気が印象的です。
初回クリア時間は約3時間でした。
3つのルートクリアまでは合計7~8時間ほどでした。
(プレイスタイルによってクリア時間はかなり変わると思われます)
ゲーム概要
UNDERTALEは、戦闘に2Dシューティング要素を取り入れたRPGです。
一人のニンゲン(プレイヤーが命名する)が、地下の国に落ちてきたところから物語がスタートします。
洞窟の暗がりを先へ進んでいくと、喋る花・フラウィに騙されて絶体絶命のピンチに陥ります。
ギリギリのところで助けてくれたのは、トリエルという魔物でした。
日課の見回りをしていたところ、主人公を見つけ、偶然発見してくれたようです。
そのまましばらく一緒に遺跡を歩き、ゲームの基本事項をレクチャーしてくれます。
本作の戦闘では、必ずしも敵を倒す必要はありません。
ほとんどの敵に、戦闘を回避するための方法が用意されています。
適切に「こうどう」することによって見逃すことができます。
敵を見逃すと経験値は入りませんが、お金は入手できます。
敵を倒すか見逃すかによってシナリオが分岐し、違う展開を迎えます。
大きく分けると3つのルートが存在しますが、そのルートの中の行動によっても、さらに細かく差分が用意されています。
繰り返しプレイすることで、様々なストーリーを味わえるのも魅力のひとつです。
敵の攻撃ターンでは、一時的にシューティングゲームのような弾幕回避を求められます。
赤いハートが自機であり、敵の攻撃を一定時間回避するとこちらの行動順に戻ります。
上手く操作すればノーダメージで突破できるでしょうが、慣れないうちは結構難しいかもしれません。
特定のボス戦では、アクションゲームのような操作を求められたり、こちら側も弾丸を発射で着たりと特殊な捜査をできる場合があります。
作中はいくつかのステージに分かれており、それぞれ見た目の雰囲気が大きく異なります。
遺跡、雪国、火山など、様々な場所を旅していくことになります。
それぞれの風景に合うオリジナルのBGMが流れ、色々な場所を探検している感覚が楽しめます。
イベントでは戦闘中においても特殊な演出が多く、ただのRPGではないという雰囲気は序盤から感じられると思います。
感想(ネタバレ無し)
1周目のプレイで、Nルートと呼ばれるルートをクリアし、2周目でPルートを無事クリアしました。
3周目ではGルートに進みましたが、最後の戦闘だけ膨大な時間を費やさなければ勝てる気がしなかったので、自力でクリアすることを諦めてしまいました(その先の展開はプレイ動画で確認しました)。
プレイして、第一印象としては『Mother2』(2しかプレイしたことがない)のような雰囲気を感じ、独特のセンスを感じました。
製作者は日本人ではありませんが、翻訳された日本語には特に違和感を覚えませんでした。
日本語でないと成立しないようなダジャレもところどころ見られ、逆に原文はどのような内容だったのだろうと気になりました。
違和感がないというより、上手に翻訳されていたのだと感じます。
ゲーム部分に注目すると、フィールドではパズル解き等のギミックが多く、戦闘では弾幕回避系シューティングが中心でした。
パズルは少し頭をひねる必要がありますが、ちゃんとヒントが与えられていることが多く、理不尽さは特に感じませんでした。
とはいえ、攻略サイトをいくつか頼ってしまった場所はあります。
敵の攻撃を避ける際のシューティングパートは、結構大変でした。
僕はあまりこういった細かい操作に慣れていないのですが、まあまあ乗り切ることが出来たと思います。
敵それぞれで決まったパターンの攻撃をしてくるので、覚えて慣れてしまえば簡単なのだと思います。
仮に苦手であっても、エンカウント率は高くありませんし、いざというときは回復アイテムでゴリ押しできるので、深刻にはならないかと思います。
(一部のルートでは強敵が多く大変ですが…)
敵を倒さずに戦闘を終わらせるためには、いくつかの行動が必要になるので、少し手間は掛かります。
正直、ガンガン倒していく方が楽ですし、経験値も得られるので攻略するうえでのメリットは大きいです。
相手を傷つけないように進める方が手間が掛かり、問答無用で倒していく方が楽だというのは何となく現実に即しているように感じます。
戦闘やパズルパート以外だと、個性的なキャラクターたちによる掛け合いが見どころの一つです。
コミカルなやり取りだけでなく、時にはゾッとするような恐怖もあるので侮れません。
各ステージでは、パートナー的なキャラクターと、敵役となるキャラクターがそれぞれ存在します。
敵にしても味方にしても、ステージを進んでいくにつれて不思議と愛着を感じるようになっていったように思います。
進めていくルートによって、登場人物の違う一面を発見することも少なくありません。
ストーリーについても多くの謎が仕掛けられており、1周クリアしただけでは全貌を掴むことは難しいでしょう。
異なるルートをクリアすることによって、物語の背景や真実を探っていくことも本作の面白さのひとつだと思います。
最後になりますが、本作では使用されているBGMがとても素晴らしいです。
本作をプレイするきっかけは、YouTubeで偶然とあるボス戦闘曲の「Megalovania」というBGMを聞いたことによります。
緊迫した曲、コミカルな曲、勇ましい曲など、色々なタイプな曲がぜいたくに使われておりイベントシーンを盛り上げてくれます。
曲を聞くと、作中のシーンが思い浮かぶような使い方は上手な使い方だと思っているのですが、本作ではほとんどがそういう曲なのではと感じました。
どんなプレイヤーでも、何かしたお気に入りの曲が見つかるのではないでしょうか。
総じて、細部まで作り込まれている作品です。
もちろん、全てが快適でストレスフリーというわけではありません。
主人公の移動速度が遅く感じられることはありますし、メッセージのスキップも快適ではありません。
敵との戦闘は時間がかかりますし、倒さないようにしている場合は、何度も敵の攻撃を避ける手間があります。
しかしいざプレイしてみると、どんな人でも何かしら感じ入るものがあるのではないかと思います。
興味を持った方は購入してみてはいかがでしょうか。
普段こういった雰囲気の作品をプレイする機会が無い人でも、本作の独特な世界に取りつかれてしまう魅力があると思います。
感想・スクショを添えて(ネタバレ注意)
この項目では多くのネタバレが存在します。
3つのルートをそれぞれプレイした後に閲覧することをオススメします。
1周目(Nルート)
1周目は何も意識せずにプレイしました。
敵を倒すこともあれば逃がすこともありました。
スクショの数は少なめです。
何の前知識もなくプレイを始め、フラウィの弾に当たって瀕死になり「えっ?」と声が出てしまいました。
可愛らしい顔が急に凶悪に変わり、このゲームは一味違うぞと頭を殴られる感じでした。
初回の印象では、初めて出会った子供に対して過保護ではと感じ、少し怖い印象がありました。
過去に失った自分の子供と主人公を重ね合わせて逃すまいとしていたのでは、という印象を覚えて、初回は倒してしまいました。
これまではトリエル、パピルスと、明確に敵意を持ってきたボスはいなかったので、アンダインに対しては大きなプレッシャーを感じました。
結局はまともに戦わず何とか逃げ切りましたが、アンダインとの友達イベントは1周目では未消化でした。
ポップで楽しげな雰囲気なのですが、確かな殺意を感じるので怖かったメタトンです。
普通には倒せない相手なので、出会うたびに、今度はどんな意地悪ゲームをやらされるのだろうと戦々恐々としていました。
オタク特有の早口言葉みたいなシーンは海外でも共通なんだなと感じて面白かったです。
ちなみに、一周目はアルフィーがクイズの答えを教えてくれていることに気付かなかったです。
前の場所に戻るための渡し舟が、たまに別のものに変化しており、遊び心があるなと感じました。
本作はこういった細かいネタがそこかしこに仕込まれています。
のんびりしているようで、時折凄みのある言葉で話してくるサンズは怖かったです。
ただNルート、Pルートでは図々しいが憎めないキャラという印象で好きです。
あと、歩行グラフィックの顔が可愛くて好きです(このスクショでは後ろを向いていますが)。
LOVEやEXPといったステータス名称に、こんな意味が込められていたのかと驚きました。
ただ、このようなメタ的な装置である「ステータス」を認識しているサンズはいったい何者なのか気になりました。
サンズの部屋に入ることで何かしらのヒントは見られますが、本作では匂わせ程度で明らかにはされていないようでした。
2周目(Pルート)
2周目のプレイにおけるスクショというだけなので、必ずしもPルート特有のシーンばかり貼っているわけではありません。
敵と遭遇したとき、時間を稼いでいると助けてくれるトリエル。
無表情のトリエルは何だか人相が悪かったので笑ってしまいました。
魔物を睨みつけて追い払ってくれているのでしょう、たぶん。
1周目でトリエルを倒してしまったからこそ出たであろうメッセージが表示され「お、ちょっと変化してるぞ」と感じました。
トリエルは主人公を助けてくれた命の恩人なので、倒すことにならなくて良かったです。
多くの人が人生で経験する「母との別れ」を象徴するような場面であり、文化を超えた普遍的な何かを感じるような気がしました。
サンズは決して主人公を匿っているわけではなく、むしろ発見できるように誘導しているのですが、全くそれを信用せず乗ってこないパピルスが面白かったです。
子供のような弟分と遊んでくれてお礼を言うサンズ。
普段はパピルスを適当にからかっているように見えますが、気にかけているということがわかります。
かわいいワンちゃんだなぁと思っていたら、ヌッと立ち上がって、メチャクチャゴツかったことに笑ってしまいました。
しばしば現代のような用語が出てくるのが面白いところです。
SNSも存在しているようですし、地底世界は意外と情報社会が発達しているようです。
サンズがニュッと扉から出てきてトロンボーンでオチのSEをつけるシーンが面白かったです。
このシーンのサンズのグラフィックが可愛かったので印象深いです。
「どこまでも続くハイウェイをドライブしてみたいが、そんなのは夢物語、だから寝てる間にドライブをするんだ」と、ベッドが車になっている理由を話すパピルス。
普段は大人のように振舞おうと背伸びをしている感が強いと感じていましたが、ここは素直に子供らしくてかわいい夢だなぁと思いました。
(エンディングのスタッフロールでは、車でハイウェイを走るシーンがあり、夢が実現したようで良かったです)
あと、ネット上でもパピルスに構ってあげているサンズは優しいなと思いました。
Pルートで初めて体験したアンダインとのデートイベントです。
パピルスが、アンダインの性格を利用して焚きつけるのが意外と策士だなと思いました。
アンダインのウヒョーというご満悦な顔芸が面白かったです。
意外とチョロいのかもしれません。
1周目ではアンダインの性別はおろか、どんな人物なのかも全然知らなかったので、このイベントで印象が大きく変わりました。
このあたりのくだりは普通に面白くて笑ってしまいました。
男だと思っていたアンダインですが、このシーンからは口調が女性っぽくなるので、少し違和感を覚えました。
半魚人は男性、人魚が女性というような固定観念があったので、半魚人の女性という存在をしばらく脳が処理し切れていませんでした。
Undine(ウンディーネ)と言われれば女性っぽいのですが、英語読みで「アンダイン」と言われると、どうしても『カルドセプト』のアンダインが思い浮かんでしまいました。
誰からも愛されるパピルスというキャラが良く語られているシーンでした。
トマトを拳で潰した後の絵面がホラー過ぎて笑いました。
そして燃え盛る家の中で、次に何をするか聞くシーンもシュールで笑いました。
ちゃんと炎でアンダインの顔が影になり、”凄み”が表現されています。
マフェットはこのシーンで急に登場したので、キャラ自体の印象は薄いのですが曲(Spider Dance)は好きでした。
トコトコと電報を持ってきた小さいクモが可愛いです。
FF6のオペラ劇場を思わせるようなイベント。
1周目で聞いたオペラをまた聞かせられるのかとうんざりしていたら、メタトンから図星を突かれたので驚きました。
アンダインの激レアなはにかみ表情。
アルフィーとアンダインのデートイベントで、最終的にはパピルスでオチがついて笑いました。
この時着ているアンダインの服はスーツっぽくて男性のようだなと感じます。
「しんじつのラボ」内でのイベントは、かなりSAN値が削られるイベントが多かったです。
辛辣かつストレートなトリエルの言葉に笑ってしまいました。
今まで出会ったキャラたちが総出で力を貸してくれるシーンは、まさに「Mother2」のラスボス戦のようで良かったです。
一部、コイツ誰だっけ?というキャラが混じっているのは少し笑ってしまいました。
最初に名前を付けたキャラが、実は動かしていた主人公とは違う人物だったと明かされる叙述トリックが面白かったです。
アズリエルはトリエル似だなと思いました。
大団円という形で終わって大満足なPルートでした。
このまま終わっておけば良かったのですが、まだGルートなるものが残っているので、プレイしないわけにはいきません。
3周目(Gルート)
さすがに3周目なので、黙って当たるのは嫌だと思って避けていたら、フラウィが本性を現してきたのが面白かったです。
「外に出ると危険なので、プレイヤーを守るために遺跡に閉じ込めていた」という状況が、「外に居るみんなを守るためにプレイヤーを閉じ込めていた」と意味合いが反転するのが面白いと感じました。
全てを見透かしたようなサンズのセリフが胸に刺さります。
スノーフルでは、サンズ&パピルスとのコミカルな掛け合いが楽しいのですが、Gルートでは非常に殺伐としたものとなります。
パズルも全スルーになりますし、寂しいです。
世界を旅するために連れていってほしいという雪だるまですが、他のルートでは2個以上持っていくと体が崩れるので止められます。
しかしGルートでは容赦なく崩れるまで持っていくことが出来ます。
Gルートのラストまで進んでからこのセリフを見ると、考えさせられます。
大勢のモンスターが住んでいたスノーフルに人が全くいなくなり、凶悪な存在として認定されていることを思い知らされます。
このチリというのは、おそらく魔物を殺した際に発生するチリなのでしょう。
Gルートで敵を倒し続けている主人公の手は、いつもチリで汚れているのでしょう。
サンズと初めて会うときにいつも握手を求められますが、その際に主人公の手にチリが付いていないか確認しているのではという考察があり、なるほどと思いました。
遊びに全く乗らない主人公に人間性の欠如を感じ取ったパピルスですが、あくまで友達になろうという姿勢を崩しません。
少しずつ無言で距離を詰めていく主人公が、ただただ不気味です。
Pルートのデートイベントでアンダインが話していたように、ピュアで良い奴過ぎるパピルスがいつか敵に殺されてしまうのではないかと危惧していた通りのことが起きてしまいます。
悲しい。
戦闘開始時にちょくちょく*マークで挿入される、主人公のコメントが恐ろしいです。
主人公のようなムーブで子供を庇って倒されてしまうアンダインが印象的でした。
「ふじみのアンダイン(Undyne the Undying)」という、英語の表記がメチャクチャカッコイイです。
ループ能力を身に付けると、最終的には退屈になって殺戮し始めるのは、色々なゲームで共通のようです。
これまでのルートであれだけ凶悪な表情を見せてきたフラウィですら若干怖がっているのが新鮮でした。
それだけGルートの主人公は不気味なのでしょう。
Gルートにおけるパピルスのセリフに倣ったセリフが印象的です。
他のルートではちょくちょく見かけてきたサンズでしたが、パピルス戦以降全く姿を見せず、ここで急に出てくるのに驚きました。
殺戮し続けてきた主人公に対しての皮肉が冴えわたります。
ふじみのアンダインには何とか勝ちましたが、サンズ戦は厳しすぎて心を折られてしまったので、倒すことは諦めてしまいました。
その後の展開についてはプレイ動画で確認し、Gルートは未クリアです。
そういう意味では、僕のプレイした『UNDERTALE』の世界においては、サンズの努力により、Gルートの結末を回避したのだと言えるのでしょう。
最初の必殺技を何とか耐えて、ゲームをプレイするきっかけとなった曲「Megarovania」を自力で聞くことが出来たので、とりあえずの達成感は得られました。
サンズが最期に画面外へ移動して見えなくなり、「パピルス おまえもはらへってるか?」というメッセージの後、LVが19→20に上がることで死を表現している演出が、何とも言えず印象に残りました。
確かにGルートは後味が良くないルートです。
しかしPルートとGルートという、いわば光と影のルートをどちらもしっかりと作り切っているからこそ、本作品の輪郭がくっきりと浮かび上がっているのだと感じます。
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コメント
>そういう意味では、僕のプレイした『UNDERTALE』の世界においては、サンズの努力によりGルートの結末を回避したのだと言えるのでしょう。
「クリアできなかったこと」が、物語の一つの結末として数えられるのもまた素晴らしい点だと思います。
自分はGルートを完遂し、「なぜこんなことをするのか」に関する話などがめちゃくちゃ直撃するタイプでした。「難しいけどできそう」な時、やり遂げたくてたまらなくなるので…
Gルートを完遂しなかった人、そもそもプレイしないことを選択した人、それぞれに「自分にはできなかったこと」をした敬意を持っています。(もちろん、Gルート完遂者にも共感のこもった敬意があります)
コメントありがとうございます。
仰る通り、「クリアできなかったこと」が挫折ではなく、結末として納得できるという点が素晴らしかったと思います。
クリアできなかったのは確かに悔しいのですが、好きなキャラであるサンズが報われたという意味で安堵しております。
(という物言いが負け惜しみに聞こえにくいという点もありがたいです)
フラウィが退屈という理由で殺戮に走った行為は邪悪なものに思えましたが、Gルートを遊ぶプレイヤーも全く同じなのかもしれません。
「できる」というだけで幸せな結末をぶち壊し、残酷なことをやってしまったという後ろめたさをリアルに感じさせられました。
ご意見ありがとうございます。
皆さんの思いが聞けて嬉しいです。