2018年12月のストーブリーグ中に、巨人の上原投手が自由契約となったあと、再度巨人と再契約しました。
一部の報道で、これはFA選手獲得の人的補償から逃れるためではないかという報道がなされました。
確かにそういった捉え方も可能だと思いますが、実際のところは分かりません。
今回の騒動の問題点などを、少しまとめてみようと思います。
目次
自由契約にした選手をすぐに再獲得する理由
まず1つ目の疑問点は、一度自由契約にした選手を、またすぐに獲得するかという点です。
過去にそういう例があったかもしれませんが、たった2ヶ月での再獲得というのは不自然です。
左膝の手術を理由に自由契約という理由はわかりますが、それならばなぜ、また契約したのかという疑問が浮かんできます。
監督が高橋監督から原監督に変わり、方針が変わったという弁明も可能かもしれません。
しかし原監督の正式な就任発表は10月23日、上原への自由契約の発表は29日と、監督就任の方が先です。
この線での理由は、少し苦しいように思えます。
ただ、上原選手がブログ上で、監督とちゃんと話し合って自由契約にしてもらった、という旨のことを書いています。
それが本当であれば、巨人以外のチームとも交渉できるように自ら自由契約にしてもらったが、巨人が改めて契約したいとオファーしてきたので受けた、という「良い話」に解釈できます。
再契約のタイミング
疑われる原因となったのは、上原選手と再契約をしたタイミングです。
FA選手を獲得した相手球団である、広島と西武にプロテクトリストを提出した直後のことでした。
これでは確かに、上原選手を人的補償で取られないために自由契約にしていたのだ、と批判されても仕方がないのかもしれません。
上原選手を取られないためというのなら、自由契約にしてしまったら逆効果なのでは、という批判もあります。
確かに、上原選手を自由契約にしてしまえば、どの球団でも自由に交渉できる状態になってしまいます。
しかし上原選手と巨人との間に、事前に再契約の密約があるのなら、他の球団が交渉できたとしても、断るだけです。
他球団に流れる心配はありません。
上原選手はプロテクトしたい選手なのか
巨人としては、長年生え抜きとして活躍した、球団の「顔」と言うべき選手でしょうし、今なお人気が高い選手です。
メジャー挑戦で一時は退団したものの、上原=巨人というイメージは保っておきたい選手であると思います。
ただし戦力として、プロテクトする28人の枠の中に入れるかと言われれば、NOということになると思います。
上原選手より活躍している投手は多くいますし、同じくらいのレベルの選手であれば、年齢が若い方を保護するのは当然です。
つまり、中日ドラゴンズにおける岩瀬投手のように、戦力としてはプロテクトするほどではないが、できれば功労者枠として保護したい選手だったと推測します。
そういった選手がプロテクトリストから外された場合、球団に対してヘソを曲げてしまうかもしれません。
このような微妙な立場の選手であるからこそ、今回のような憶測を招いたのではないかと考えられます。
推測
今回の件に関して、真相が明らかになることはないでしょう。
それを承知の上で勝手に推測させてもらうなら、球団は上原選手の自由契約の申し出を、棚ぼた的にプロテクトに利用したのではないかと思います。
前提として、上原選手自身は嘘を言っていないものと考えます(選手は疑いたくないので)。
つまり「監督と話し合って自由契約にしてもらった」ということは事実だと信じてみます。
この上原からの提案によって、球団としては「プロテクト枠が1個空いたぜ!ラッキー!」くらいの感覚でいたのではないでしょうか。
本当は最初から来季も契約する気だったものの、プロテクト枠が浮くため、あえて引き止めはしなかったのではと思います。
ひょっとすると頭のいい上原選手自身、プロテクト枠を忖度して、自ら球団側に提案したのかもしれません。
「球団もたくさん選手を獲得してゴタゴタしていると思いますし、そのあたりの話が落ち着いた後に、また契約してくれるならよろしくお願いします」というように気遣ったのではないでしょうか。
上原選手自身、「球団がどう考えていたのかはわかりませんが」と話しています。
したがって、球団側から「後で再契約するからとりあえず自由契約にさせてくれ」といったような明確な打診は無かったのだと思います。
いずれにせよ、「他の球団からの話はなかった」と上原選手が語っているように、上原選手自身の需要は無かったようです。
しかし、よくある的外れな批判として「結局、どの球団も上原を獲りにいっていないじゃないか」という反論があります。
しかし今回の問題は、上原選手を欲しいかどうかと言う話ではありません。
上原選手をプロテクトすることによって、本当ならプロテクトから漏れていた選手を守れてしまうということが問題なのです。
西武や広島にとっては、その選手こそが本当に欲しかったかもしれません。
これがルールの抜け道を利用したプロテクトだと思われてしまう程度には、納得していない人は多いというのが現実でしょう。
何が問題の本質か
今回の問題の本質は、FA選手獲得による人的補償の制度が、ルールの抜け穴を使うことにより形骸化する恐れがある、という点です。
確かに、プロテクトリスト作成前に、取られたくない選手を自由契約・もしくは育成契約などにしておけば、保護できてしまいます。
さすがに露骨にはできないでしょうが、今回のようにどうとでも捉えられる状況では、有効な方法だと考えられます。
このような問題が起きないよう、きちんとペナルティを規定することが大事でしょう。
またメジャーのように、人的補償ではなく、ドラフト指名権の譲渡という方法も悪くないと思います。
グレーなプロテクト方法一覧
今までにも実績があり、しばしば利用されるプロテクト方法についていくつか紹介します。
コーチ兼任プロテクト
「選手をコーチ兼任にしておけば、プロテクトから外れていても獲られへんやろ・・・」という暗黙の了解を当てにしたプロテクト方法です。
近年では、日ハムなどの空気を読まない球団によって、効果が無くなってきている方法です。
それでは監督兼任だったらどうなるのか、中日の谷繁兼任監督のときにやって欲しかったです。
岩瀬式プロテクト
人的補償に指名された場合、移籍した瞬間に引退するという脅しをして拒否する方法です。
これをやられると、強行指名した側は、一部の金銭補償を貰うだけで終わってしまうため、かなりの損となってしまいます。
(最終所属球団が、移籍後の球団名になるというメリット(?)はあります)
それならば、最初から金銭補償を選んだほうが、多くのお金を貰えることになります。
岩瀬の場合は、コーチ兼任プロテクトとの併せ技のようでしたが、そちらは突破されてしまいました。
真偽のほどは不明です。
上原式プロテクト
今回紹介した方法です。
プロテクトリスト提出前に自由契約をしておき、提出後に再契約するというものです。
これが許されるなら、何でもアリになってくる可能性があります。
脇谷式プロテクト
プロテクトとは少し違いますが、FA権を持つ選手をプロテクトから外し、もし獲られてしまった場合は自らFA権を使い、戻ってくるという方法です。
一度移籍するのが難点ですし、年俸が高ければまた人的補償での流出があり得るため、あまり有効な手段ではないかもしれません。
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