8bluepiece様によるノベルゲーム「墨染楼閣」(すみぞめろうかく)の紹介・感想記事です。
明治~大正時代を舞台に繰り広げられるノベルゲームです。
ジャンルとしてはホラー・ミステリー・ファンタジーの要素を含むサスペンスゲームだと思います。
Xでフォローしている方のツイートから作品の存在を偶然知り、プレイしてみたところ一気に読んでしまいました。
プレイ開始時から右肩上がりで面白くなり続けるストーリーが一番の魅力です。
張り巡らされた伏線と回収、ミステリ的な犯人当てシーンなどなど見所が満載です。
クリア時間は約10時間でした。
(TRUE ENDを見るまで)
ゲーム概要
大正4年、大富豪・御宮寺(おんぐうじ)家で働く少女・依千葉(いちは)が主人公です。
ある夜、なかなか寝付くことが出来ずに邸内の庭に散歩に出た際、般若の面を被る謎の人物に短刀で刺され、意識を失います。
依千葉が意識を取り戻すと、刺されたはずの傷は無く、御宮寺邸で目を覚まします。
しかし屋敷に人の気配は無く、自分が知っている屋敷とは様々な点が異なります。
しかも屋敷内には異形の存在が徘徊しており、見つかると依千葉を追いかけまわしてきます。
ここはどこなのか、何故自分はここにいるのか、怪物は何者なのか、全てが謎に包まれた状態から長い物語が始まっていきます。
自分以外の人物たちと協力して、ここから脱出することができるのでしょうか。
基本的には1本道の作品で、6つのBAD ENDがあります。
選択肢はそれなりに重要なものが多いので、セーブして進めて行くと良いでしょう。
感想(ネタバレ無し)
最後まで熱中してクリアしました。
大正を舞台にしたサスペンスノベル作品ですが、ミステリ的要素もあり、謎で牽引していくパワーが強いです。
最初の30分ほど読み進めてしまえば、あとはもう先が気になって仕方がない気持ちになると思います。
ネタバレをすると面白さが損なわれてしまうと思うので、具体的に書けないのがもどかしい思いです。
怪物に追いかけまわされるデスゲームホラー的な作品かと思いきや、そのワンアイデアだけで引っ張るような作品ではなく、作品の一要素に過ぎません。
舞台設定を活かし、非常に多くのサスペンス要素を生み出しており、要所要所に盛り上がるシーンがあります。
最初に読み始めたときは、こういう雰囲気でずっと続くのかなと思っていたのですが、物語の展開がかなり多いので、飽きることなく読み進めていけると思います。
強いて言うなら、序盤の展開だけはややゆっくりかもしれません。
「死月妖花」「ひぐらしのなく頃に」といった作品が好きな人には、特にハマる可能性が高いと思います。
間違いなく素晴らしい物語だったのですが、システム面で気になった点をいくつか書いていきます。
まず、セーブできるデータ数が5つしかないのが不便でした。
読み返したくなるシーンがとても多いのですが、栞がわりにセーブすることすらままならないので、その点が残念でした。
ダウンロード版が無くブラウザでしかプレイできないため、セーブデータを別で保存しておくという技も使えません。
そして他に、メッセージ速度を変更できないという点がやや不便でした。
デフォルトのスピードだと、僕にとっては少しゆっくりに感じられます。
スキップについてもも未読・既読の判定がなく、それほど速いスキップではないので、使うことが躊躇われる機能でした。
これらの点は、個人的にノベルゲームでは重要なポイントで、普段であればすぐプレイをやめてしまう可能性があるものでした。
しかし、それでもこの作品は最後までプレイしたいという気持ちが強く、最終的にはほとんど気にならないくらいのポイントになりました。
この点をマイナスと捉えるのではなく、これを差し引いても十分お釣りが返ってくるくらい面白かったということを記させていただきます。
感想・スクショを添えて(ネタバレ注意)
ここから先はネタバレを含む感想を書いています。
作品の性質上、ネタバレが作品の面白さ損なう可能性がありますので、未プレイの方は十分ご注意ください。
依千葉がたまに(頻繁に)見せる悪い顔が大好きです。
黙っていると大人しそうに見えるので、その顔とのギャップが良いです。
ローグライクゲームのダンジョンみたいだなと思いました。
床下に百面が来ることがないのなら、かなり安全な場所だなと感じます。
こんな序盤に安全地帯を明かすと緊張感がなくなるのではと心配しましたが、百面に追いかけまわされるのがメインの作品ではないので、特に問題はありませんでした。
留紺色(とめこんいろ)という色は生まれて初めて聞きました。
文章中にさらっとこういった言葉を出せるのが凄いなと思います。
ちなみに、この字の色が留紺色(#1c305c)です。
最初は職業も性別もバラバラの人たちだと思われましたが、だんだんと人物同士の繋がりや関係性が明かされはじめ、その辺りから物語が加速度的に面白くなってきました。
武力担当の御坂さんの登場です。
百面相手に打ちまくれば、とりあえずは撃退できるというのは意外でした。
とはいえ弾のストックにも限りがあるでしょうし、倒せるような存在ではないのでしょう。
御宮様の正体は分かりませんが、見た目は誓颯の色違いなので、血筋的に近いなどの理由があるのかもしれません。
こういった家系図は、ホラー・サスペンス系の作品だとゾクゾクしてきます。
人間を生贄に捧げるために、メモを残さなければならないくらい頻繁に発生する「業務」となっている辺りにおぞましさを感じました。
本作はホラー・サスペンス要素がメインの魅力ですが、作品テーマとして「血の繋がり」「家族の絆」といったものに力を入れて描かれているように思いました。
家族に関するシーンでは涙腺が緩む場面が多く、ここも印象に残っています。
絶体絶命の状況で、ヒーローのように現れてくれる大誠叔父さんがとても格好良かったです。
御宮寺家ともともと禍根があったおかげで、最終的には助けてくれました。
流石に相手を射殺はしなかったでしょうが、そうしてもおかしくない迫力があったというのは想像に難くありません。
同じく、絶体絶命の時に助けてくれる戦闘マシーン・御坂さん。
御坂さん視点では何年も経っているはずですが、ちゃんと約束を守ってくれました。
この時の若葉の表情が殺意に溢れすぎていて笑いました。
御宮寺幸久は生来の女好きということもあるのでしょうが、生贄のストックを増やさなければいけないため、欲望だけで動いているわけではないのかもしれません。
墨染楼閣で出会ったときに比べると、年数が経ったせいか人間味が出てきました。
あちらの戦闘マシーンっぽい雰囲気もカッコいいですが、こちらの洋装姿も魅力的です。
依千葉の、生きるために何でもやろうとするバイタリティは見習うべきものがあります。
過去に殺されかけた経験から来るものなのでしょうが、御坂さん並にサバイバルへのメンタル適性がありそうな気がします。
通常の立ち絵ではありますが、黒い影が良い感じに掛かって凄みを感じさせます。
この探偵っぽい推理シーンについては、もうあまり気にしていなかった阿比留氏の正体について明かされたので、かなり衝撃を受けました。
この不敵な笑みが、黒依千葉が出てる感じで好きです。
「お前も死んだんだな」という皮肉が効いています。
誓颯の異常性を感じたシーンでした。
いくら本当に死ぬわけではないとは言え、世話になっている御坂さんの頭を背後から打ち抜くのはかなりやり過ぎです。
さすがに御坂さんが可哀想でした。
井戸に捨てた死体が消えてなくなるくだりは、「意味が解ると怖い話」でよく耳にするネタですが、上手くエピソードに絡めてあるなと感じました。
誓颯に殺され、たまたまこちらに来てしまった御坂さんですが、ようやく家族の仇に出会えたので、結果オーライだったのかもしれません。
仇の正体については、もうその人しか残っていないですよね、という感じで納得でした。
暗闇から無数の手が伸びて引っ張って来るのは、ジョジョの第4部の「振り返ってはいけない小道」のビジョンを想起させられます。
ビジュアル的にも恐ろしいですが、仇敵が引き込まれるので溜飲が下がります。
最序盤から長い付き合いだったこの二人ともお別れの時がやってきます。
年老いて無くなった後に、また墨染楼閣に送られるのでしょうか。
氷織ちゃんは(名前の印象もあって)冷たそうに見えましたが、結局最後まで普通に助けてくれました。
長編ノベルの最後が、元凶の断罪シーンというのはちょっと意外でした。
御宮様は一時的に誓颯の体を借りているという認識で良いのか、それとも乗っ取ってしまったのでしょうか。
どちらにせよ、しばらくは御宮寺家への復讐で忙しくなりそうです。
御宮様が誰の体でも簡単に借りられるとは考えにくいので、瓜二つの容姿である誓颯と、何か波長が合う理由があるのかもしれません。
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