RPGツクール2000で製作されたアクションRPG「ひよこ侍」をプレイしました。
可愛らしいタイトルに反して、剣の道を極めようとする男のハードなストーリーの作品です。
2004年に公開された作品ではありますが、緊張感のある戦闘システムと、先が気になるストーリー展開で、一気にプレイしてしまいました。
アクションRPGと言っても、完全に自由に動くわけではないため、アクション要素に苦手意識がある人でも、そこまで敬遠しなくても良いと思います。
クリア時間は約5時間でした。
ゲーム概要
「ひよこ侍」は、戦闘をアクションでこなしていくRPGです。
敵を倒してレベルを上げたり、装備を整えることによって強くなっていきます。
主人公の少年テューンはとある事件をきっかけに、剣で一番になるために旅に出ることになります。
世界一の剣士を目指し、ひたすら剣の道を極めようとするテューンの人生を描いた、シリアスでハードな作品です。
ストーリーは基本的には一本道です。
シナリオの進行に従って、行ける場所が増えていきます。
イベント上の戦闘も多いですが、通常戦闘はシンボルエンカウント式が大半です。
敵を倒すことで経験値とお金を稼ぐことが可能なので、難しいと感じた場合は、レベル上げをすれば進めて行けるでしょう。
本作で最も特徴的なのは、戦闘方式です。
移動は、敵に近づくか遠ざかるかだけですが、敵の攻撃の隙をつく絶妙な間合いの駆け引きが持ち味です。
操作自体はシンプルで、普段は中段の構えで、上ボタンで上段の構え、下ボタンで抜刀の構えをとります。
中段で決定キーを押せば通常攻撃を放ち、上段と抜刀の構えの際に決定キーを押せば、セットしている技を繰り出します。
中段の構えであればそのまま移動することが可能ですが、移動すると上段と抜刀の構えは、解除されてしまいます。
したがって、上段の技と抜刀の技を使用する際は、一度該当する構えをとる必要があるため、少し隙が生まれます。
複雑な操作は必要ありませんが、ゲーム後半は素早い操作を求められることもあります。
また、キャンセルキーを押すと防御状態になります。
大半の攻撃を弾くことができますが、中には防げない攻撃も存在します。
技は、ストーリーの進行やイベントなどによって習得していきます。
セットできる技はそれぞれの構えで一種類だけなので、戦う相手によって効果的な技をセットすると良いでしょう。
感想(ネタバレ無し)
とにかくストーリーが衝撃的で、どのような結末を迎えるのか気になり、どんどん進めてしまう魅力があります。
「ひよこ侍」というタイトルと、そのビジュアルの可愛らしさによって、逆にストーリーのハードな側面が際立っているように感じられました。
決して清々しいストーリーではないので、そういった話が苦手な人は注意しましょう。
戦闘は、それ自体が楽しいため、通常敵とのエンカウントが苦になりません。
攻撃をするために近づいたり、攻撃を空振った後に隙が生じるので、自分から攻撃を仕掛けるとリスクがあります。
敵の思考も段々賢くなっていくので、迂闊に近づいたりせず、お互いがじりじり間合いを測るような展開が多くなります。
まさにこれが剣での「死合」という雰囲気が感じられ、緊張感を生み出す戦闘システムとなっています。
戦闘が難しく感じる人でも、レベル上げでゴリ押しすることも可能なので、完全に詰むということはないと思います。
この緊張感は、ぜひ実際にプレイして感じて欲しいなと思います。
感想(ネタバレ有り)
本項目では、ゲームの結末に関わるネタバレが含まれているため、未プレイの方はご注意ください。
3つのエンディングを全て確認して、クリアすることができました。
ラストダンジョンでレベルが自然と上がってしまったため、LVは21になり、やや余裕があるラストバトルとなりました。
有用だった技は、上段技は「兜割り」、抜刀技は「風抜き」でした。
とくに「風抜き」の使い勝手は非常に高く、この技だけでクリアが可能だと感じるほどです。
ある程度の距離で「風抜き」を放ち、すぐに後退で距離を取れば、かなり安全に敵を削ることができます。
ただし、後半だと防御の構えをなかなか解かない敵も多いため、そういう場合には「兜割り」でガード無視でダメージを与えると効果的でした。
攻撃力や防御力は、戦闘への影響が意外と大きいため、苦戦する場合は装備を整えると楽になると感じました。
攻撃力を極端に上げて防御を捨てる戦法は、一瞬の隙で勝つか負けるかという、ロマンあふれる戦闘スタイルです。
さて、エンディングは3つありますが、どのエンディングが一番しっくり来たでしょうか。
僕は初回プレイでは「刀のためです。」を選び、切腹エンドとなりました。
幼少期に、リクナーに連れられてユキムラの刀を見たときに、魅了されているテューンの印象が強かったからです。
このエンディングでは、ずっと刀に魅了されて振るっていたのだという結末になり、最後は自身を貫いて死ぬことになります。
本当に刀を愛していたのだとしたら、これが幸せな結末だったのかもしれません。
「死んでいった者達のためです。」を選ぶと、目的を達成しても、ただ虚しさだけが残るエンディングとなります。
世界一になるために多くの人を殺したのだから、彼らのためにも世界一にならなければいけないというのは、人間らしい考え方だと言えます。
人間らしい感情が再燃してしまったが故に、虚しさだけが残り、そのまま暴漢に殺されてしまいます。
最期の、幼いテューンとソラが「今日はどこに行く?」と駆けていく幻影が印象的です。
自由に遊び場を変えられた幼少期は、剣の道だけを歩いてきた今のテューンには、羨ましく感じられたのかもしれません。
「自分のためです。」という答えは、確かにその通りかもしれません。
ソラに「テューンは、何で一番になるの?」と聞かれたことや、ユキムラの剣に魅せられたこと、その剣によって家族が殺されてしまったこと、そういったことが合わさり、剣を極める道に入ったのだと思います。
逆にそうしなければ、怒りや悲しみといった感情で、自らを保つことができなかったのかもしれません。
ユキムラを倒して最強となったことで、ようやくテューンの子供時代が終わるのではないでしょうか。
こじつけかもしれませんが、テューンが着るひよこの着ぐるみは、子供=ひよこという象徴なのかもしれません。
しかし不幸なことに、子供時代が終わったとしても、もう彼の周りには誰もいません。
セティがテューンを誘ったのは、自分と同じく空っぽになっていることに気付いたのではないでしょうか。
老人になり、あれほど極めた剣を忘れてしまったのは、剣から解放されているということなので、ある意味では良かったのかもしれません。
どの選択肢を選んでも、エンディングの後味が良いものではありません。
剣の道を極めると言っても、結局は人を殺す術であり、仕方のないことなのかもしれません。
以下、各キャラクターについて所感を書いていきます。
・テューン
テューンは全てを捨てているつもりでも、物語の前半では、まだまだ色々なものを捨てられていないという印象があります。
ズールとの決着前にマニマニに一度帰ったことで、過去と決別して、ようやく色々なことに吹っ切れたように感じます。
本作はテューンが成長するための、幼少期からの決別の物語という側面があるように見えました。
・ユージュ
この頃のテューンは、ユージュのことを共に旅をする仲間というイメージを持っており、今考えれば甘い考えだったと思います。
最強を目指せば、当然ユージュとも戦う運命にあるのですが、その事実から都合よく目を逸らしてしまっていたように見えました。
ユージュとの決闘は、「友」との決別を象徴しているのではないでしょうか。
テューンに友ができるとしたら、それは同じ剣の道を極めようとする存在でしょうが、それ故に、このような結末になるのは避けられなかったでしょう。
・セティ
女性であるハンディを克服しようと、最強を目指しているセティですが、残念ながら敵としてはそれほど強い相手ではありませんでした。
女として生まれてしまったために、それが最強を目指すうえでの足かせとなってしまっており、その悔しさは計り知れません。
エンディングの一端を担うとは想像していませんでしたが、空っぽになってしまった者同士で、テューンとはお似合いだったのかもしれません。
・ガディルトン
テューンと殺し合うことになると思っていたのですが、そんなことはなく、平穏に別れました。
どこか常軌を逸したところを持つキャラが多い中、ガディルトンは常識人だったと思います。
最初は好戦的な脳筋キャラだと想像してしまっていたのですが、そうではなく理性的な人物でした。
多くの人が経験する、夢を諦めて現実と折り合いを付けることを象徴するようなキャラクターで、テューンと争うことはなくホッとしました。
・レイス
超一流の剣の腕と、英雄のカリスマを兼ね備えたライバルのような位置づけの存在でした。
剣のために全てを捨てているわけではないのに、テューンは一度敗北しているため、成長する上で大きな壁となった印象があります。
レイス自身、根本の部分では、ジャンルーカと争うのは自分のエゴのせいだと認めていますが、一人の剣士の力の限界も悟っているように見受けられました。
丁寧な物腰を最後まで崩さず、清廉さを保って散った人物だと思います。
・アイシャ
レイスの口車に乗り、最初は情報を引き出すのに利用しただけのチョイ役だと思っていました。
しかし、自分のために危険を冒してお願いを聞いてくれたテューンに対して、一途な想いを抱いていくようになります。
付き合っている帝国兵たち全員と別れてきたことからも、テューンへの本気度がうかがえます。
しかし、敗北が続くテューンにとって、その思いは余計なものだと感じられたのでしょうか。
こういった状況でなければ、単に無視し、お別れして終わりだったのかもしれません。
しかしアイシャの本気も感じ取り、自分自身も余計なものを全て捨てる必要があると感じたため、後には引き返せない方法をとったのかもしれません。
テューンが異性への恋愛感情と完全に決別した象徴として、強くこのシーンは記憶に残っています。
・ズール
テューンに助言し、過去を吹っ切るきっかけを与えたキャラクターです。
ズール自身は「人間と戦い、勝ち負けを競うなどあまりにくだらないとは思わないか。」との発言からわかる通り、他人と比べた場合の強さを追い求めてはいないと感じました。
人のいないところに独りで暮らし、ズールはあくまで自分自身の強さを追い求めているのではないでしょうか。
その結果、噂を聞きつけた腕試しの挑戦者を倒していくうちに、「卑剣使い」などと勝手に呼ばれ、嫌気がさしていたのだと思います。
だからこそ、最後にテューンに負けたときも、すでに自分なりに満足しているため、感謝の意を表したのだと思っています。
テューンへのアドバイス、生き様、最期など、どれも格好いいキャラクターだったと思います。
・ジャンルーカ
幼少期に初登場した際は、憎むべき悪役という印象でした。
もちろんその後も、倒すべきラスボスと言う形で君臨しているのですが、国へ与えた良い影響もあり、一概に悪と断ずることが難しくなってきました。
テューンがズール戦後、過去と完全に決別してからは、ジャンルーカは憎むべき敵役ではなく、尊敬すべき最強の相手へと変化しています。
対決後、テューンが「ありがとうございました」と一礼するのも、その心境の変化の表れなのだと思います。
ジャンルーカのセリフ通り、テューンにははっきりと倒すべき相手がいて、幸せだったと思います。
・ユキムラ
師匠であり、育ての親であり、最強の敵でもある存在です。
テューンが剣の道に入るきっかけを作った人物でもあります。
ユキムラがどのような人物だったか、多くの部分は想像するしかできません。
リクナーからテューンに剣の稽古を頼まれてもあっさり引き受ける辺り、多くのことに頓着しない性格なのかもしません。
テューンの剣の道はユキムラから始まり、ユキムラで終わることになるため、控えめな人物像ですが、強く印象に残りました。
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コメント
また懐かしい。 触れてから10年経っているかもしれませんがせっかくなのでコメントを。
エンドでは老いるまで生きたものが好きですね。自害はともかく、チンピラにやられるエンドでは食べるためですらなく斬っていった獣がまさしく無駄死にに感じられましたので
兜割りと炎を散らす草はレベル上げてのゴリ押しと合わせてアクション苦手な方の友ですよね。 自分は素直に当時おすすめだった浮雲や風抜きの逆の挙動の技を使っていたはずです
今後とも応援しております(ツクール2000作品で画面の縮尺がおかしくなる方はwin10 ツクール2000などで検索)
コメントありがとうございます。
どのエンディングがしっくり来るか、プレイヤーによって違いがあるのが面白いですね。
チンピラに倒されてしまうエンドは一番虚しさが感じられるので、私も受け入れがたかったです。
最強の称号というものは、本人にその気が無くなってしまえばすぐに無意味になるという、その程度のものでしかないというメッセージなのかもしれません。
そういえば、発火草を使う技も、ゴリ押しには有用ですね。
貧乏性のため、消耗品を伴う技は乱用しにくく、あまり使いませんでした。
風抜きは本当に便利だったなと思います。
win10でのツクール2000作品の挙動についての補足コメント、ありがとうございます。