真昼の暗黒(フリー・サイコサスペンスノベルゲーム)紹介・感想・考察

ゲーム
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先日、レビューサイトである「もぐらゲームス」様にて、本作品「真昼の暗黒」の記事を読みました。
サスペンスという僕が好きなジャンルということもあり、この紹介記事を読んで興味を持ち、プレイしました。
先が気になる展開と、一気に読んでしまえる手頃なボリュームのゲームです。

 

ゲームのダウンロードはこちら(「ふりーむ!」作品ページ)
真昼の暗黒

紹介

ゲーム概要

本作品は、基本的には文章を読み進めていくタイプのノベルゲームです。
まず最初に目を引くのが、特徴的なインターフェースです。
ゲームを起動すると、昔のWindowsを模したデスクトップ画面が出てきます。
デスクトップには「Game_Start.exe」や「Game_Load.exe」などのショートカットがあり、それらをクリックすることで、ゲームを始めることができます。
つまり、ゲーム本編は「ゲーム内ゲーム」の形で展開されることになります。
これにどのような意味があるかは、後ほど考察してみようと思います。

グラフィックとサウンド


この作品自体、レトロゲームの形式でデザインされているため、イベント絵もあえてそのような作りになっています。
昔のPCゲームのような絵柄ですが、ストーリーの雰囲気とマッチしており、独特の味わいがあります。
BGMに関しては、サスペンスというジャンルにうまくマッチした、不安と緊張を煽るような曲が多いです。
曲もレトロ調に聞こえるのですが、グラフィックと合わさって統一感があります。

ストーリー

主人公は、姉と二人で暮らす10歳の少女・昼間(ひるま)ミサです。
姉が行方不明になったために警察に保護され、カウンセラーである暮方計(くれがた かず)の診察を受けることになります。
作品の見所は、事件の過程・展開と、登場人物が抱える闇だと感じます。
明るく愉快な話ではなく、一貫して鬱屈し、退廃的な空気が蔓延している作品です。

ゲーム開始時にプレイヤーに行われる質問により、ミサ視点か第三者視点どちらかのエピソードが展開されます。
エピソードは8つ(+おまけエピソード1つ)ですが、それぞれの視点で用意されているため、2倍の16エピソードが存在することになります。
僕の場合、クリア時間は6時間~7時間ほどでした。
フーダニットなどがテーマとなるミステリーの面白さとは違いますが、先の展開が気になる上質なサスペンスとして、ノベルゲームが好きにはお勧めしたいです。

感想・攻略メモ(ネタバレあり)

どちらのエピソードから読み始めても、いったんは5話で終わってしまいます。
両方の視点を5話まで読み進めると、その先のエピソードが閲覧できるようになってきます。
資料のパスワードはそう難しいものではありません。
(パスワード・多摩市の事件は2028年、青年が事件を起こしたのは2015年です)

まずミサ視点から読み進めましたが、暮方のうさん臭さが良く描かれていました。
誕生日に夕食を食べに行ったシーンでは、ミサの振る舞いに顔をしかめていましたし、温和な人間を演じているだけだというのが感じられます。
そのため、第三者視点のエピソードを読んだときに、暮方が犯人だという点については、それほど驚きはありませんでした。
それでも、先に第三者視点を読むよりは楽しめたと思うので、いい順番で読めたなと思っています。

登場人物ひとりひとりに闇があり、人は見た目通りでないというリアルを見せつけられます。
姉・うたげは、自分の感情のせいでミサの母を遠ざけてしまいますし、再婚する父親に対しても怒っています。
本人は良かれと思ってやっていることなのに、結果として最愛の妹の歪みを形成してしまった点は、何ともやるせない気持ちになります。
後半のエピソードもあまり救いがなく、ミサの精神状態そのもののようなエピソードが描かれています。

それでも、殺人鬼である暮方計の視点から描かれたエピソードは、犯人視点のサスペンス物として非常に面白かったです。
事実を公表せず、深沙と計が一緒に逃亡するENDの方が、自然な流れのENDのように感じられました。

考察(ネタバレあり)

さて、普通の読み物としても単純に面白い本作ですが、この作品がゲームという形式で描かれた意味も考えてみたいと思います。
ただの僕の深読みや誤解に過ぎないかもしれませんので、一つの考え程度に留めてもらえればと思います。

まず、このゲーム(エピソードに関する部分)は深沙の手記と田辺記者の取材をもとに作られた作品であることが、作品内で明らかにされています。
つまり、エピソードに関する部分は、深沙の主観による描写であり、事実と異なる部分がある可能性が高いです。
そのためミサ視点・第三者視点のエピソードは、深沙によって書かれた、信用できないものということです。
(どちらの視点のエピソードであっても、エンディングで「この作品は・・・」のあとがきが出てくることから、そのように推測できます)

では、どの情報が事実なのかと考えると、ゲーム外のファイルである「DOCUMENTS」などの資料は、とりあえず客観的な事実だろうと思われます。
そのため、信頼できるのはゲーム外の資料だけです。
これらに明記されていない情報は、すべて疑ってかかる必要があると思います。
以下、重要そうな資料について考えてみます。

資料についての考察

・「当時の新聞.bmp
このような事件があったのは事実のようですが、少年事件なので逮捕された少年の名前は載っていません。
これが本当に計が起こした事件かどうかは、慎重になる必要があります。
エピソード中で穣介が計に記事を突きつけるシーンでは、「日野市在住の少女に暴行の疑いで少年(11)を逮捕」となっています。
資料の「当時の新聞」内では、多摩市の少年(13)となっており食い違うため、やはり疑問があります。

・「Asame.mp3」
計と穣介が親子というのは事実のようで、小学校の名簿にも名前が載っているようです。
しかし計が穣介を殺したかどうかは、証拠や死体すらないため不明で、そもそも本当に死んでいるかもわかりません。
また、穣介はうたげに想いを寄せていたようで、ミサと関わっている姿はあまり見かけられていないようです。
エピソードの中では、ミサと穣介がよく会話をしていますが、すべてミサの願望や妄想であることも考えられます。
そう考えると穣介が失踪した理由は、うたげが死んだことによる自殺と考えることもできるかもしれません。

・「2027/07.mp3
うたげと父親の電話の会話です。
うたげがやや一方的に父親からの申し出を断っていること、ミサが母親のようにならないようにかなりこだわっている様子がわかります。
このあとに交通事故で亡くなったのか、それともミサは真相を知らなかったので亡くなった描写にしたのかは不明です。

・Papa_facebook.html
父親が2027年11月に投稿した記事が載っています。
エピソード中で、父親は7月に交通事故で死んだことになっていますので、少し考える必要があります。

本当に死んでいる場合は、ミサを悲しませないためにうたげが自演しているということになります。
しかしその場合、生命保険や再婚相手の紹介を匂わせる記事をわざわざ書くか、疑問が残ります。

本当は死んでいないという場合、エピソード中では死んだ扱いになっているのはなぜなのでしょうか。
単純に、ミサが真実を知らないという可能性もあります。
しかし僕は、父親がミサを迎えに来ない現実を受け入れられず、死んだということにしたのではないかと思っています。
なぜ迎えに来ないのかという理由は、うたげが強く反対したからだと思いますが、そのうたげが死んでからも迎えに来ないのは、疑問が残るところです。


・「01/18.mp3
おそらくエピソード8が終わったあとの深沙の音声データです。
自分は生存しているという内容なので、とりあえずは信用できます。
内容からすると、計は生存していないかのような書き方ではっきりしません。

・「事件概要.docx
ゲームの本筋となる多摩川の事件の概要です。
うたげの死体遺棄事件があったことは事実のようです。
ただし、他殺と自殺の両方で捜査していた警察が、自殺と断定していることに注意が必要です。

また、穣介の血縁上の父親は暮方計のように書かれており、母親は再婚だと書いてあります。
しかし暮方計と穣介が親子ということは肯定できたとしても、暮方=暴行少年はまだわかりません。
記者のメモにも「少年A=暮方計?」と書いてあるのみです。

仮説その1

「うたげは本当に殺されたのか?」ということを疑い、本当に自殺だということを検討してみる説です。
資料から推測できる事実は少ないですが、それだけでも色々と見えてくることがあります。
一番大きな疑問点は、そもそもうたげの失踪事件は、本当に殺人事件だったのかという点です。

違和感があったのは、そもそも用心深い暮方が、ミサとうたげの家で犯行に及び、死体を運ぶだろうかという点です。
エピソード中のイラストでは、床に血液のようなものが付着し、引きずられている跡が残っています。
しかし資料にはそういったことは書いていないため、現場が本当にこのような状態だったのかはわかりません。
ひょっとすると、うたげは本当に自殺である可能性があります。
自分が自殺の原因だと思いたくない深沙が、このように記憶を捻じ曲げてしまったのかもしれません。

また事件後、周囲の人間たちが自分に冷たくなっていった理由について、暮方が周囲をコントロールしていたと記者との会話にあります。
これも、思い込みによる深沙の責任転嫁と考えることができます。
穣介とのやりとりも自分との都合が良いように描写されていますし、随所で自分が悪くないように書こうとする意図が見られます。
こう考えた場合、深沙がこのゲームを作成した理由は、すべては自分のせいではなく、暮方や周囲のせいだったと印象付けたかったということになるでしょう。
世間にわかりやすいストーリーを提供しただけとも言えます。

仮説その2

もう一つの可能性としては、ミサがうたげを殺したという可能性です。
動機は、穣介がうたげに想いを寄せていることによる嫉妬です。
しかしミサがうたげを殺害することは難しいでしょうし、運ぶ手段もありません。
ミサが帰宅する前に、一台の不審な車が停まっていたという証言がありますが、これは事件と関係があるかもしれませんし、ないかもしれません。

僕がミサ主犯説に惹かれる理由の一つは、邦画の「真昼の暗黒」と本作が同名であるということです。
邦画「真昼の暗黒」は、単独犯の犯人が、自分の罪を軽くすることを目的に、知り合いを共犯者に仕立て上げるという内容のストーリーです(wiki調べ)。
そう考えた場合、このゲームはミサ自身の犯行を軽くするために、暮方に罪を被せているのではという疑いが出てきます。
資料「01/18.mp3」により、計が死んでいると仮定するならば、うたげの事件や自分の今の境遇などをも含めて、すべて暮方のせいにしたとすればすっきりします。

考察まとめ

総合的に考えると、ミサがうたげを殺したと考えるのは、少し無理がありそうです。
その理由としては、一度行方不明にした後に死体が発見されるようにするには、小学生ではまず不可能だからです。
暮方に手伝わせた可能性もゼロではありませんが、暮方とミサが、もともと知り合いでない限りは難しいでしょう。

次にあり得そうなのは、うたげは本当に自殺だったという考えです。
これならば資料の「自殺と断定された」という事実とも合致します。
さらに、うたげの自殺の原因が自分だと考える深沙が、ゲームによって責任逃れしようとする動機も理解できます。
しかし、暮方計がなぜミサを引き取ったのかを考えると、説明が難しくなります。
うたげが自殺であるのなら、暮方はミサを放っておいても危険はないはずです。
ここの理由の弱さはネックであると思います。

最後に考えられるのは、やはり暮方計がうたげを殺した犯人であるという考えです。
この場合、深沙はなぜゲームという形式で話を残したかという疑問があります。
深沙は、世間が納得するような話が欲しいのならくれてやるといった趣旨の発言があるので、わかりやすいストーリーに仕立てたというだけかもしれません。
そして、穣介に関する部分や細部などは、少しだけ自分に都合の良いように改変したのでしょう。
ややインパクトに欠ける説ですが、一番筋が通っていますし、シンプルだと感じます。
だからこそ、これが真実だと素直に受け入れられない気持ちもあります。

以上、長々と妄想に近い考察を書き連ねました。
記事の冒頭で紹介した、もぐらゲームス様の紹介記事が思わせぶりだったからこそ、疑いながらのプレイ・考察となりました。
正しいかどうかはさておき、考察しながら色々と説を書くのは、非常に楽しかったです。
自分なりの説を持っているプレイヤーの方がいれば、ぜひその説を聞いてみたいなと思います。

 

余談で、ストーリーの本筋とは関係ないですが、本作で好きなセリフを一つ紹介します。
「脚を折ったから歩くのを手助けする、ならわかりますが、脚を折ったから親切にする、は違うでしょう」
計がうたげに「偽善」に対して咎めるセリフです。
ハンディを負った人に対しての接し方について、僕自身、新たな気付きを得られたような気がします。

2019年8月11日追記
僕の考察などよりも、すごく納得できる記事がありました。
とても面白い記事なので、興味のある方はぜひ読んでみてください。「闇鍋結社(ヰ)」様
真昼の暗黒 感想(1周目)

 

そのほか、本ブログで紹介しているゲームをまとめた記事はこちらです。
本ブログで紹介しているゲーム系の記事まとめ
ゲーム

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