今回の記事は、RPGツクールVX Aceで製作された育成シミュレーションゲーム「おしばな物語」の紹介です。
本格的な育成シミュレーションのパートと、心打たれるストーリーパートがどちらも素晴らしい作品です。
僕がこのような育成シミュレーションゲームというジャンルを最初にプレイしたのは、中学生くらいの頃に、プレステで「ときメモ」をプレイしたとき以来だったと思います。
思えば、あの頃すでに育成シミュレーションゲームの骨格は完成されていたんだな、と感慨深くなりました。
初代「ときメモ」は、イベントの日程を気にしながら、自身のステータスを上げつつ、目的の女の子の好感度を上げていくという、忙しくも楽しいゲームでした。
本作「おしばな物語」は、硬派な育成シミュレーションゲームが好きな人でも、満足できる内容ではないかと感じます。
気ままにプレイしての、1周目のクリア時間は5時間で、攻略を見ながらストーリーエンドを見たプレイは3時間ほどでした(ベリーイージーモード)。
エンディング以外の共通パートが多いですが、2周目からはイベントスキップも解禁されるため、プレイは快適だと思います(ver5.0b)。
ゲーム概要
本作「おしばな物語」は、教育係であるルカーヒ・ノクウを操作して、貧民階級の少女モリスを、王子の結婚相手の候補として育て上げる育成シミュレーションゲームです。
もともと王国一のフラワー・メイヤー(プリンセスを育て上げる役)だったルカーヒは、とある出来事によって貧民階級へ落とされてしまっています。
そんなルカーヒのところへ、貧民出身の兵隊長・スタルウェブがやってきて、妹のモリスをプリンセス候補へと育て上げるようにと依頼されます。
兄の出世の道具として役に立ちたいと考えるモリスと、再度フラワー・メイヤーとしての矜持を取り戻そうとするルカーヒ、そしてその周囲の人々が織り成す人間ドラマが見所です。
ゲーム本編の流れとしては、1月からゲーム本編の育成パートが始まり、12月のクリスマス辺りで終えるという流れです。
ゲームの終わりまでに、プリンセス候補をふるいにかける「フラワー試験」という試験が全9回実施されます。
これらの試験で良い成績を修められるように育成しつつ、登場人物たちとの交流を深めていくことで、エンディングが分岐していきます。
各試験で、どのような能力が求められるかは、ゲーム中でも明確に確認することができます。
試験日までに、モリスをいかに育ててあげていくか、先を見据えた計画的なプレイが問われます。
ゲーム開始時に難易度が選択できるため、プレイヤーのスタイルに合った難易度を選択すると良いでしょう。
育成は1日単位で進んでいくため、ひと月を進めるのにもボリュームがあります。
運動や勉強などの、能力値を上げる行動をするにはお金が必要になります。
お金は毎月、モリスの兄から送られてきますが、計画的に使わなければすぐに無くなってしまいます。
さらに、育成を行うことで、逆に下がってしまう能力もあるため、直近の試験で何が求められているのかを意識して育てる必要があります。
モリスだけでなく、教育役であるルカーヒの育成も大事です。
ルカーヒの指導力が高くなければ、モリスの能力上昇も遅くなってしまいます。
とにかく先を見据えた育成計画を意識しましょう。
土曜日は、能力上昇のための行動だけでなく、男性キャラと会うなどの特殊な行動も多く選択できます。
平日溜まった疲労を回復させたり、成長が遅れている能力値を補う行動をさせたり、色々と行動しやすい曜日です。
日曜日は、試験やイベント、ストーリーパートの進行などが良く起こる曜日です。
日曜の夜は、ルカーヒの行動を一週間単位で選択するタイミングでもありますので、よく考えて選ぶようにしましょう。
このように一週間を積み重ねていき、本編を進めていきます。
男性との好感度によって挿入される特殊なイベントなどもありますが、大筋は一本道のストーリーです。
様々な条件を満たすことによって、エンディングは数多く分岐していきます。
ゲーム同梱の「操作説明書」や公式サイトに、攻略情報やヒントが記載されています。
難しいと感じる場合は、遠慮なく参照することをお勧めします。
感想(ネタバレ無し)
2周目に、一番難易度の高いストーリーエンドで、クリアすることができました。
一度クリアすると、イベントスキップや早送り機能など、周回しやすい工夫がなされているのは親切だと思います。
育成シミュレーションパートは、コツを掴むまでは難しい部分も多く出てくると思います。
「操作説明書」を読んで、各パラメータやコマンドの意味を理解しなければ、進めていくのに苦労するでしょう。
ストーリー部分は、小説を読んでいるかのように、非常に心を打たれる内容でした。
身分がすべてという世界の重々しい雰囲気と、そんな世界でも必死で生きる人間たちの強さを、余すところなく描いていると思います。
レトロなタッチのグラフィックも、作品の雰囲気とマッチしており、本作を昔話のように仕立てています。
イベントでは惜しみなく一枚絵が使われ、物語をドラマチックに盛り上げています。
ストーリーパートだけでも十二分に楽しめる内容なので、「ゲームが苦手だけど物語は読みたい」という人にもぜひお薦めしたいと思います。
ただし、ベリーイージーモードを選んだとしても、初回プレイ時は、手探りのプレイだけでストーリーエンド(トゥルーエンド的なもの)を見ることは難しいです。
一度のプレイでストーリーエンドを見たいなら、しっかりと攻略ページを見ながら進めていくのが良いでしょう。
攻略メモ(ネタバレ有り)
本作では、公式ページにゲーム攻略が記載されています。
ノーマルモードでストーリーエンドを見るには、緻密な計画が必要になると思います。
僕はベリーイージーでのプレイでしたが、どちらのモードでも頭に入れておいた方が良い攻略のコツを書こうと思います。
・一番上げにくい数値は人気
序盤はあまり気にしなくて良い数値ですが、人気は上げられる手段が限られています。
そのため、休日で手が空いているときは、広場に行って人気を上げておけば、大きな間違いはないと思います。
一気に数値を上げることが難しい部分なので、序盤からコツコツ上げていくことは重要だと思います。
・平日の休憩は使わない
平日に休憩コマンドを使うと、様々な能力が低下してしまいます。
そのため、平日にHPを回復させるのには、赤い薬を使いましょう。
疲労の回復には、自由を使って回復させましょう。
好意も上がるので効率が良いと思います。
ただし日程的に詰まっているときは、疲労も青い薬で回復させて、能力上げに専念することも必要です。
なお、休日での休憩は、能力の低下が無いため、安心して行うことができます。
・お金が無くて手が空いたらとにかく談笑
平日での能力を上げるコマンドは、基本的にどれも好意が下がっていきます。
好意が30以下になると、寂寞状態になるロスもあります。
好意はどれだけあっても困らない数値なので、お金が無いときなども談笑を使い、「好意」の貯金をしておきましょう。
逆にお金が余っているのであれば、ぬいぐるみをプレゼントして好意を上げることで、能力上昇に専念できます。
・ルカーヒの行動は先読みして行うことが重要
モリスの能力を上げるには、ルカーヒの指導力の上昇も不可欠です。
モリスが次に上げたい能力を先読みして、ルカーヒに行動させることが重要です。
たとえば、直近の大会が体力試験で、次の大会が知力試験であるなら、ルカーヒを先んじて勉強させておくことが重要です。
モリスとルカーヒを同時に同系統の行動をさせるのは、少し勿体ないと感じます。
感想(ネタバレ有り)
ストーリーエンドとプリンセスエンドを見ただけですが、メインストーリーにはとても心を打たれました。
最初に見たプリンセスエンドは、ストーリー上では全く登場しない第8王子と結婚する、当初の目的が達成された内容です。
スタルウェブもモリスも、相手に対して素直になれないまま、結末を迎えたという印象です。
しかし、これがバッドエンドという印象はありません。
モリスがウーゴ少年を助けるという、プリンセス候補にあるまじき行為を取ったがゆえに、それが逆に王子に選ばれる理由になるというのは、素のモリスを肯定してくれているように感じられ、明るい未来が感じられました。
スタルウェブと共にいられないのは寂しいかもしれませんが、この王子と一緒にいられるのなら、そう悪くないのではと思います。
ストーリーエンドでは、スタルウェブと一緒になり、あるべきところへ落ち着いたという印象を受けました。
二人の間にある感情は、恋愛感情よりも、家族や兄妹としての愛という印象を強く感じたので、夫婦として結ばれるのは少し違和感を覚えました。
しかしよくよく考えてみると、スタルウェブもモリスも、少年少女のような幼い印象を受けますし、未熟な形の愛でも、別に不自然ではないのかなと思い直しました。
絵柄や話し方のせいもあってか、ルカーヒさんはおばさんであるという印象が強かったです。
しかしウーゴとの会話内容から推測すると、20代であることは間違いなさそうです。
最終的にはモリスとの関係が、まるで母娘のように感じられたため、ますます母親として老けて見えてしまいます(失礼)。
今までに恋人がいたことは無いとのことでしたが、ウーゴ君の希望通り、二人がくっつけばいいなと思っています。
ゲーム開始時、ルカーヒは、ララルゥが脱走した事件により、自分は間違っていたのではないかという疑念が少し湧いてきているのだと思います。
しかし、王国一のフラワーメイヤーであるという、今までの自分を否定する段階にまでには、至らない状態でした。
その後、モリスや老婆との出会いによって、価値観が変わりつつあり、ルカーヒ自身の変化にもつながったのでしょう。
ストーリーエンドで、モリスの背中を押し、スタルウェブのところへ送り出したときには、新しいルカーヒに生まれ変わっていたのではと思います。
ルカーヒの家に届いていた荷物が、今までの教え子たちからの贈り物というのが明かされるシーンは、思わず涙してしまいました。
今までのフラワーメイヤーとしてのルカーヒも、決して間違っていたわけではないと、肯定してくれたのは良かったなと思います。
ただ単に、ララルゥやモリスにとっては、「おしばな」としてプリンセスになるよりも、フラワーとして花開かせた方が良かっただけなのだと思いたいです。
この作品は基本、本当の意味での悪人がいないので、それが逆に心が苦しく感じてしまいます。
憎むべき悪役がいれば、その人物を憎んでいればいいだけです。
しかし本作では、意地悪な言動をする人物であっても、この世界や人物の背景を考えると、仕方ないことなのかなと思ってしまいます。
素直になれないスタルウェブやモリスも、そのように振舞わなければならない経緯や事情があります。
だからこそ、みんな幸せになって欲しいなと思いながらも、プレイしていて、単純な解決法がなかなか見つからないため、もどかしく感じてしまいます。
本作は、ノベルゲームではなく、シミュレーションゲームです。
ストーリーとして想定されているエンディングはあるものの、基本的には、どのような結末であっても、一つの終わり方だと思います。
ダウンロードページには「運命を選択する育成シミュレーションゲーム」と書かれています。
したがって、プレイヤーが自分が一番だと思う選択が、本作のトゥルーエンドなのだと思います。
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