前書き
同じ作者様の作品「真昼の暗黒」をプレイして、とても面白かったので、本作「MINDCIRCUS」をプレイしました。
作品紹介ページには「ミステリー風味ADVノベルゲーム」と記載されています。
かなりグロテスクで猟奇的な描写がありますので、そういったものが苦手な人には、プレイをお勧めしません。
R-15とのことなので、15歳未満の方もプレイはご遠慮ください。
「ふりーむ」に投稿されているゲームファイルは、残酷なイラストがを削除したバージョンで、「フリーゲーム夢現」は、そうではないバージョンとのことです。
僕は違いがあるとは知らずに「ふりーむ」の方をプレイしましたが、それでもかなり刺激的な描写の部分がありました。
どちらでプレイするかは、お好みで選ぶといいでしょう。
ゲーム概要
本作「MINDCIRCUS」は、文章を読み進めていき、選択肢を選ぶことで結末が変わっていくノベルゲームです。
レトロなグラフィックが特徴的で、作品全体に独特の雰囲気を与えています。
マップを移動したり、部屋を捜索したりする場面もあるので、アドベンチャー的な色も濃いです。
文章がメインのゲームには珍しく、RPGツクールMVで制作されています。
一枚絵のマップ上で、ポインタを移動させることによって、建物の中に入ったり、マップ間を移動することができます。
次にどこへ行ったらいいか分からない場合もありますが、マップ画面で「!」マークが付いているところに行けば、シナリオが進んでいきます。
本作は「ミステリー風」の作品であり、「ミステリ」ではありません。
いわゆる推理小説のような作品を期待すると、求めているのと違う展開になってしまう可能性があります。
確かに途中、謎解きで文字入力が必要な場面もあります。
しかしいわゆる犯人やトリックを当てるような作品ではないので、そこは注意が必要です。
ちなみに、攻略情報は公式ホームページに載っています。
では本作はどういうジャンルなのかと聞かれれば、長いですが「ミステリー風サイコサスペンス・アドベンチャーノベル」と言えるかなと思います。
本作「MINDCIRCUS」のあらすじは以下のようなものです。
以上が、本作「MINDCIRCUS」の概要です。
感想(ネタバレ無し)
前項では、ゲームのアウトラインの紹介をしました。
しかし、アドベンチャーゲームで肝となるのは、物語の内容であり、文章の面白さだと思います。
本作は、主人公・院府(いんふ)の一人称視点で語られますが、その地の文が読んでいて面白いと感じました。
もちろん物語そのものも面白かったのですが、地の文で語られる院府の考え方や思考に、人間臭さやリアリティが感じられるのです。
院府の考え方に共感できるというわけではなく、まるで院府が存在しているかのように、彼の思考が地の文で伝わってきます。
例えば、上の画像の地の文は、物語の進行に関係のない部分ではありますが、院府の経験則のようなものが感じられ、キャラクターの存在感が増していました。
キャラクターの存在感があるからこそ、院府の持つ劣等感やどうしようもない悩みがリアルに感じられ、鬱屈とした気持ちが感染してしまいます。
「inferior」という由来もあるでしょうが、僕にとっては「陰・負」という印象に感じられました。
一般的にノベルゲームは、プレイヤーを飽きさせないように、どんどん物語を展開させていくものが多いと感じます。
その結果、必然的に地の文は、状況の描写に費やされることが多くなります。
もし語り手の心理や内面の描写が多いのであれば、上手に語らせないと、なかなか話が進んでいかず、テンポが悪くなってしまいます。
本作は見所はストーリーだけでなく、登場人物の内面や心情描写も大きいと思います。
バカンスにうってつけな島が舞台ですが、院府をはじめ、登場人物たちはどこかに闇を抱えています。
楽園のような島の雰囲気と、人の陰鬱な内面の描写のギャップは、まさにサーカスのようにプレイヤーを眩惑させることでしょう。
ゲームシステムについては、少し不便なところがありました。
調べるべきところを調べ終わるまで話が進まないのですが、どこを調べればいいのかよくわからず、1マスずつ総当たりにせざるを得ない場合がありました。
それと、いつでもセーブできるわけではないのも、少し不満点ではありました。
しかし総合的には、上質な小説を読んでいるような面白さだったので、この点を考慮しても、オススメする作品ということに変わりはありません。
さらに本作の注意点としては、アガサ・クリスティの名作「そして誰もいなくなった」のネタバレがあります。
犯人やトリックもバラされてしまうため、まだ読んだことのない人は、ご注意ください。
感想(ネタバレ有り)
島の名前で、ある意味ネタバレしているのですが、途中でピンと来ました。
しかし若穂も含め、全員が自殺してしまうほど病んでいるという事実で、悲しい気持ちになりました。
バッドエンドはいくつかありますが、そのどれも必見と言えるほど凄惨な内容でした。
本編がこの先どうなっていくのか気にならなくなるくらい、強烈な描写で魅入られてしまいました。
やはりこの島に来ているだけあって、みんなどこかしら闇を抱えているなと思います。
院府は、語り手として内面の描写があるだけに、突如として猟奇的になるとギャップが大きく、より不気味に感じました。
しかし不思議なのは、院府の変貌は唐突に感じられるのに、どこか自然に納得してしまう自分がいるということです。
死んだはずの人が生き返ったり、唐突に自殺する人が現れたりするので、何が起きても不思議ではない雰囲気があるせいかもしれません。
TRUEエンドはいくつかありますが、2が一番好みでした。
自分だけでなく、塀戸さんも来ているところに、やり切れない思いを感じてしまいます。
イベント絵の二人がとても良い笑顔なので、より一層辛く感じてしまいます。
「真昼の暗黒」に続き、本作もプレイしたことで分かったのですが、おそらく僕は、この作者の文章のファンになってしまったのだと思います。
また新しい作品が出れば、間違いなくプレイさせていただくと思います。
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