RPGツクール2003で作成されたフリーゲーム「細胞神曲 -Cell of Empireo-」の紹介や感想記事です。
以前から、面白そうだなと思って興味を持っていたのですが、今回プレイする時間が確保できたので、遊んでみました。
ストーリーはもちろん、探索や謎解きの作り込みが凄く、キャラクターが大変魅力的なゲームでした。
まだプレイしていない人への宣伝を兼ねて、紹介や感想を書いてみようと思います。
細胞神曲 -Cell of Empireo- 【完成版】
ゲーム概要
あらすじとしては、探偵事務所に勤める主人公・阿藤が、失踪した後輩を追っていく途中に拉致されるという導入です。
拉致された先の施設から、生存者と協力して脱出することが当面の目的となります。
基本は施設内を探索しながら調べていくスタイルですが、様々な謎解きやキー入力によるミニゲーム、敵からの逃亡などの要素があります。
ゲームのクリア時間は、公式ページなどにも書いてありますが、初回クリア時間は10時間~15時間(ルートE~B)とあります。
(本作では、バッドエンドのことはエンディングと呼び、それ以外のエンディングをルートと呼びます)
僕が実際にプレイした時間も、このくらいだったと思います。
そして、A・Sのルートを見ることを含めたクリア時間は15時間~20時間、全ルートを見ようとすると20~30時間とのことです。
(途中バッドエンディングも数多くあります)
こういったジャンルの作品としては、破格のボリュームと言えるでしょう。
ゲーム内容
ゲームの雰囲気を別の作品に例えるとしたら、序盤はPSの「バイオハザード1」に似た雰囲気があります。
徘徊するクリーチャー、研究施設と謎解き、プレイヤーの行動次第で死んでしまう仲間、マルチエンディングなど、僕の中では同じような緊張感がありました。
初代のバイオは、敵をガンガン倒していくというゲームではなく、いかに回復役や弾薬を節約して生き延びるかというゲームでした。
本作も戦いがメインではないので、消耗を減らして、回復アイテムを温存するというリソース管理がやや重要になってきます。
謎解きに関しては難しいところもあると思いますが、公式サイトに詳しい攻略があるため、詰まった場合などは無理せず参考にすると良いと思います。
メニュー画面
手に入れたアイテムなどは、このようなメニュー画面で確認できます。
敵との接触やイベントによって、体力や精神力、侵食率という数値が上下していきます。
これらを回復できる手段も限られているため、この辺りのリソース管理が非常に大事になってきます。
ゲームの流れ
基本的には、マップを進む⇒進めない場所がある⇒必要なアイテムを探したりイベントをこなす⇒新しく行けるように所を探索、という流れです。
イベントシーンが続くところもありますが、その際にもキー入力ゲームなどのミニゲームが挿入されるため、あまりダレることはなく、緊張感があります。
ストーリーが進んでいくにつれて、キー操作による新たなアクションが追加されたりするなど、単なる探索ゲームにならないように、プレイヤーを飽きさせない工夫が凝らしてあります。
本作はイベントシーンを含め、油断しているとゲームオーバーになってしまう場面が多いので、こまめなセーブは非常に大事です。
セーブデータ15個分をフルに活用し、少し前へ戻ってやり直せるようにしておくと便利かもしれません。
しかし、とりあえず何かのルートを見ることが出来れば、チャプター途中から始められるようになるため、まずは一度クリアすることをお勧めします。
感想(ネタバレあり・初回プレイ後)
何とか1回目を終えることが出来ました(ルートE)。
最初から最後まで、緊張しながらプレイして楽しむことが出来ました。
再序盤での実験棟での探索は、花瓶が落ちたり、死体が動き出したりするたびにドキッとしてしまいました。
本棚の資料や研究員のファイルから、起きていることがだんだんわかってくるのは、さすが「探索×情報収集型サスペンス」と銘打っているだけあります。
ところどころにある一発勝負の逃走ゲームは、初回のぶっつけ本番が一番緊張します。
そういう意味では、事前知識なしの初回プレイが一番楽しめたのではないかと思っています。
そんなこんなで何度も死んでゲームオーバーになりながら、最後はほぼ誰も生存していないルートEとなってしまいました。
花蓮が死ぬ辺りでは、途中、信濃を追いかけたりすると花蓮が死んでしまいそうだなと思ったので、やり直したりしたのですが、どうあがいても死んでしまいました。
これまでのフラグの立て方に問題があったのだろうなと思っていたのですが、先回りすれば良かったのだとは気づきませんでした。
柳・倉知も立て続けに死んでしまい、まあ最初は仕方ないかと思いながら進めました。
クリア後に、攻略サイトでルートAやルートSへの分岐条件を確認しましたが、これは普通にプレイしていては気づけないなと感じました。
花蓮を追いかける際に、普通に追いかけていけないというのは、なかなか意地悪です。
そして柳救出にも時間制限があるとは思っておらず、普通にのんびりプレイしていた気がします。
途中のライツアウトも、おそらく正しいボタン以外押してはいけないのでしょう。
わざわざ回想の中で、そう難しくないライツアウトの正解のヒントが出ていたのは、そういうことなのかな、と後から思いました。
ただ、普通のプレイでは気付かないような方法で生存させられるので、「ぜひともやり直したい!」という気持ちになり、次のプレイへのモチベーションは非常に高まりました。
それと、嘉納にも固有フラグがあり、条件を満たしていれば再登場するということに驚きました。
ルート分岐条件とは関係ないようですが、素性が気にはなっていたので、そのあたりが解明されることも期待しています。
余談ですが、ベイビーちゃんと追いかけっこをする際、すぐにエレベーターのボタンを押しに行き、その場で待機していると、ベイビーちゃんが引っかかって、全然こちらに来られなくてらくでした(下記の画像の位置)。
たまたまかもしれませんが、そのまましばらく待っていても引っかかりが取れる気配はなさそうでした(1回目・2回目の遭遇共に)。
ちなみにこれって、のあが産んだ子供の成れの果てなんでしょうか・・・
子作りに対しても抵抗がなさそうな描写があったので、もしベイビーちゃんたちが自分の子供だとするなら、数も多かったですし、やはりぶっ飛んだメンタルだなと感じます。
感想(ネタバレあり・周回プレイ・到達点S後)
ルートSと、さらにその先の到達点に至りクリアしました。
ルートEでの情報量とは全然違い、色々と伏線が回収されると共に意外な事実も明らかになり、達成感がありました。
仲間全員と協力して、聖堂でのあと戦うシーンは、ほとんど死んでしまったEルートと比べると賑やかでした。
倉知さんの大きな見せ場があり、個人的には満足でした(ちなみにもう一つの見せ場と思っているのは実験棟脱出後の能力発現シーン)。
信濃に関する推理では、主人公が探偵だったことを久々に思い出させてくれる場面でした。
結構がっつりと推理するので大変でした。
資料の情報など、もう自分が覚えていない情報も多く出てきたので、ここは少し攻略サイトに頼ってしまいました。
その後のオリジン戦⇒宇津木戦⇒つらら回避では、宇津木戦とつらら回避に苦労しました。
最初のオリジンβ戦は、比較的楽でした。
基本的にバリアに張り付いて攻撃し、敵の攻撃が始まったらうろうろ移動していると、基本回避できました。
宇津木戦は、事前に説明も出てこなかったので、敵の攻撃時に何をしたらいいのか戸惑いもあり、最初の挑戦ではコツを掴むので精一杯でした。
ただ、それほど複雑な入力ではないので、ここまで来られているプレイヤーなら何度かやればクリアできるだろうと思いました。
つらら回避は、パターンを覚えてしまえば楽だなと思います。
基本、4レーンか5レーンに陣取り、今自分が何番目にいるか把握していれば楽でした。
奇数・偶数パターンや、1234+5678パターンを注意して避けられれば、あとは適当に回避しているだけでも避けられました。
ゲームオーバーになっても、即コンティニューできるのが非常にありがたかったです。
最初からやり直しだったら、気持ちが折られてクリアできていなかったかもしれません。
初鳥と直接会いに行く途中、登場人物たちが分かれ道に居る通路は、とても印象深かったです。
最初の辺りは正しい選択が出来ましたが、普通に間違えてしまったところがあり、自分の読解力を恥じました。
流れてくるBGMとも相まって、非常に感極まるシーンでした。
そして最後の最後に、グランドエンディングと呼ぶべき到達点(S+)が用意されていて良かったです。
最後、麗慈を助けるシーンで、いきなりキー入力を求められ、とても焦ってしまいました。
自動的に助かると思って気を抜いて、片手でスマホを持ちながらプレイしていたので、慌ててスマホを置いてキー入力しました。
間に合って良かったです。
最後のスタッフロール後の「貴方を構成する細胞の一つとして愛を込めて」という言葉は、とても印象に残っています。
作品中でも、過去を含めたすべての要素によって現在の自分を作り上げているのだ、というような信濃の言葉がありました。
それと同じように、このゲームをプレイしたことで、本作品も自分自身を構成する要素の一つに加わったんだな、と不思議な感覚を覚えました。
たとえゲーム内容を忘れてしまったとしても、この作品が自分自身を作り上げている要素の一つとなっているという意味だと解釈しています。
そう考えるとこの作品は、プレイヤーに感動を与えて宣伝させ、自ら増殖したいという意思を持った細胞のように感じてしまいます(さながらドーキンスの言う「利己的な遺伝子」のように)。
いずれにせよこのように面白いゲームをプレイできたのですから、僕自身が「至高細胞」というゲームの「ホスト」や「ドール」、「クリーチャー」に成り下がってしまったとしても、後悔はありません。
以下、印象深いシーンについてスクリーンショットと共に思い起こしていきます。
序盤でいなくなった麗慈がようやく再登場したシーンです。
最初から一貫して無愛想で乱暴な印象でしたが、ここで初めてユーモラスな部分を見せた気がします。
この言い方も、創と実の会話に出てきたので面白かったです。
初回プレイは失敗したので、柳先生が横で死んでいるのが悲しいところです。
相手が知らない自分の能力を出して優位に立つシーンは、能力バトルの場面ではたまらないカタルシスです。
後の、のあ戦も然りです。
こういう、敵対していたキャラが助けてくれる展開はアツくて好きです(炎だけに)。
陽自身、結構好きなキャラクターだったのでなおさら良いですね。
宇津木が笑うシーンは多いですが、自然に笑うシーンはとてもレアなので、とても印象に残っています。
初鳥自身もこの頃が一番楽しかったと言っていましたし、3人の関係がまだ良好だったのが窺えます。
急に出てくる推理シーンです。
推理ゲームの犯人を当てるための選択肢のようで、緊張感がありました。
キャラクターが何か推理をしているシーンは、大体格好よく見えるので好きです。
旧研究棟の中で、宇津木と初めて対峙するシーンです。
不意に遭遇して、お互い空白のメッセージウィンドウで、ピリピリした緊張感を伝えてくるのが、とても好きです。
決着もあっという間ですが、何をやっているのか、短いシーンに詰め込まれていて面白いです。
強烈なキャラクターでしたが、その心の内を想像すると、不思議と可愛く見えてきます。
このセリフも嘘ではないのでしょうが、(おそらく)阿藤に殺されるために必要以上に悪者ぶっているのが、何とも言えないところです。
ルートEのジェノサイドルートを見ているだけに、本当に良かったと感じるシーンです。
全員生還エンドという感じで、プレイヤーにも達成感があります。
本ブログで紹介しているゲーム系の記事まとめ
コメント
ほんとにすごい分量だった。チャプター1でうじゃうじゃしていた研究員ひとりひとりにも名前やバックグランドが振られていて、作者の気合が垣間見えた。全員が全員一回は見せ場を持ち個性的で嫌いなキャラクターがいなかった。後世に語り継ぎたい作品。
登場人物を使い捨てにせず、全員にきちんと見せ場があるのは良いですよね。
作者の登場人物への愛とこだわりが感じられました。
これをフリーで公開してくれているのには頭が下がります。