医療機器商社(ディーラー)の仕事内容について語る

仕事
この記事は約6分で読めます。

ブログの記事のネタが少なくなってきたため、新たなジャンルを開拓しようと思います。
今回は、医療機器販売の商社(ディーラー)の実際について書いていきます。
インターネット上で検索したときに引っかかるのは、その多くが就職・転職サイトでした。
個人のブログではあまり見かけなかったため、この業界に興味がある人のために書こうと思います。
ただし、自分の経験に基づいて書きますので、会社によってそれぞれ違いがあると思います。
ご了承ください。

 

 

医療機器商社とは何か

病院内で使われている専門的な消耗品としては、主に薬と医療機器が挙げられます。
医療機器商社とは、そのうち医療機器を販売する卸売業者ということになります。

メーカーから医療機器を仕入れて、病院に販売するのが役割です。

医療機器といっても、細かいものから大きなものまで様々です。
安価なものとしては、ガーゼ、注射針、シリンジ(注射筒)といったものが、イメージがつきやすいと思います。
高価なもので言うと、骨折治療に使用するプレートやスクリュー、心臓外科手術に使用する人工血管などがあります。
このあたりは、普段の生活の中では見かけることは少ないと思います。
また血圧計、心電計、AED(自動除細動機)、エコー(超音波診断機)などの検査機器ももちろん扱います。

 

 

ディーラーとメーカーの違いについて

さて、先ほど医療機器商社(よくディーラーと呼ばれます)はメーカーから商品を仕入れて、病院に販売すると説明しました。
ではなぜメーカーは直接病院に納入せず、ディーラーを使うのでしょうか。

大きな理由は、納品業務のアウトソーシングです。

多数存在する病院に直接メーカーが納品していては、どれだけ人がいても足りません。

しかしその地域のディーラーに商品を卸して病院に納品をしてもらうことで、メーカーは商品PR・商品開発などの営業活動に専念できます。


つまりディーラーは納品のプロ、メーカーは商品知識についてのプロ、というのが基本的な見方です。

しかし、ディーラーはただ物を納品しているだけではなく、色々な商品について最低限「広く浅く」知っていることが求められます。
というのは、実際の現場に納品しているのはディーラーなので、ディーラーが病院の人から相談を受けることが多いからです。
そのため、ディーラーもある程度色々なことを知っていなくてはなりません。

もう一点メーカーと大きく違うのは、「色々なメーカーの商品を扱える」という点です。


メーカーは自社製品しか販売することが出来ませんが、ディーラーは色々なメーカーの製品は扱うことが出来ます。

これこそがディーラーの最大のメリットであり、醍醐味と言えるでしょう。

 

 

具体的な仕事内容

さて、具体的な仕事内容はどういったものがあるかというと、会社や病院によって様々です。
ただ個人的には、以下の3つに分けられるのではないかと思います。

納品業務

これは、すべての基本になる行為だと思います。
病院より注文を受けて、その商品を納品する仕事です。
注文を受けたものをメーカーから仕入れ、物が届いたら病院へ届けるのが基本です。
もちろん、緊急で商品が必要になったため、急ぎで商品を届けて欲しいと言う依頼もあります。
他によくある形態として、オペ貸出というものがあります。

ある手術で使用する器具・インプラント材料などをいったん貸出品として納め、実際に使用したものだけ買取となる形態です。

整形外科や循環器科などに多い形態です。
とある手術において、どれを使うかは実際に手術をしてみないとわからないため、色々な種類の商品・サイズを準備しておくというものです。
体内を治療したり留置したりする医療機器は高額なものが多いため、すべて事前に買ってもらうことは不可能です。
そのため、高額なインプラント製品などはこのような形態で持っていくことが多いです。

 

営業活動

これは、ディーラーとしての営業活動です。

例えば別のディーラーが納入しているAという製品に対して、Bという製品をPRし、切り替えるような活動です。

Bのメーカーと病院に同行し、決定権をもつドクターやスタッフに働きかけます。
Bの製品的な優位性、コストメリットなどを説明し、自社が納入できるように持って行きます。
当然、Aを納入しているディーラーに気付かれれば、値段を下げられたりするなどの防御策を取られたりしますが・・・
そのあたりの攻防というのも面白さの一つと言えるでしょう。
また、病院からの見積もり依頼というのも多いです。

Aという製品を買うとしたらいくらくらいになるか、また他に類似品があれば、それのカタログや見積もりも欲しい、という内容が多いです。

こういった場合、ディーラーはどちらの商品を入れても自社のメリットになります。
ただし、他ディーラーにも同じ見積もり依頼がされている場合は、単純な価格競争となったりします。

交渉活動

これは病院に対してではなく、仕入先であるメーカーに対しての交渉活動です。

例えば、現在納品している製品について、使用量が多くなってきているので価格を安くして欲しい、などといった内容です。
また、病院に提出した見積もりについて、もっと安くして欲しいと言われたときなど、もう少し下げられないかと交渉することもあります。

この交渉をするために必要な材料は、本当に色々存在します。
しかし最終的に交渉の成否は、ディーラーとメーカーの関係性による部分が大きいと感じます。
信頼関係、好き嫌いと言い換えてもいいでしょう。

 

 

求められること

ディーラーが求められていることというのは、2方向からあります。
一つは病院から求められていることで、もう一つはメーカーから求められていることです。

病院から求められている典型例としては「納入価格を下げて欲しい」「納品対応をきちんとして欲しい」「より良い商品の提案をして欲しい」「様々な情報が欲しい」ということでしょう。

つまり、仕事内容のほとんどはこの4つに直接関わってきます。

そしてメーカーから求められていることの典型例としては、「自社の製品をたくさん売って欲しい」ということに尽きます。

それに関連して「病院の情報が欲しい」というのもあります。
双方の求めていることをよく理解し、うまく繋げることが出来れば、自然と上手くやっていける仕事と言えるでしょう。
そういったことに気付かずに、なんでも自分中心でやろうとしていくと、板ばさみになって大変かもしれません。

 

 

この仕事の良いところ・悪いところ


まず良いところは、仕事の自由度が高いという点でしょう。

最低限やらなければいけない納品業務などはもちろんあると思いますが、自分から動ける部分も大きいです。

何より、ちゃんと勉強して専門的な知識を得てしまえば、格段にやりやすくなります。

勉強好きで成長したいという人は、いくらでも勉強することがあるため、打ってつけと言えます。

また、医療機器について広い知識がつくため、医療機器メーカーへの転職が比較的しやすくなるのもメリットです。


悪いところとしては、仕事量が多くなりがちという点でしょう。

メーカーから仕入れたものに利益を載せて、病院に販売すると言う商社の特性上、どうしても薄利多売になります。
一人辺りがこなさなければいけない仕事量と言うのは多めになってきます。

また、医療業界ですので、当然緊急対応というものもあり、予定外に時間を喰ってしまうことがあります。
人の命が関わっているだけに、無茶な内容でも断りづらいので、優しい人にとっては大変な仕事と言えます。
どんな仕事にも、良いところと悪いところはあります。

色々書いてきましたが、仕事の大変さを左右する最大の要素は、仕事内容ではなく人間関係だと思います。
人間関係についてまではこの記事では解説できませんが、とりあえず少しでも役に立てば嬉しいです。

そのほか、本ブログで紹介している仕事系の記事をまとめたページはこちらです。
本ブログで公開している仕事系の記事まとめ
仕事