パラノマサイト FILE23 本所七不思議(ホラーミステリーADV)紹介・感想

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スクウェア・エニックスによるホラーミステリーアドベンチャー『パラノマサイト FILE23 本所七不思議』を購入してプレイしました。
前々から気になっていた作品で、そこまで長編ではなく、さらにお手ごろな価格の作品ということで、今回プレイしてみました。

クリア時間は約8時間でした(公称クリア時間は約10時間とのこと)。

購入はこちら ※2024年1月時点で税込\1,980

Steam

ゲーム概要

ゲームを起動すると、案内人に導かれ「蘇りの秘術」を巡る壮絶な命の奪い合いをお見せしましょう、という導入でスタートします。

 

まずは会社員・興家彰吾(おきいえしょうご)と不思議大好き女子・福永葉子(ふくながヨーコ)が夜の公園で会合しているシーンから始まります。
ヨーコは愛犬・オゴポゴを生き返らせるために、蘇りの秘術と関係している「本所七不思議」という怪談の調査をとして、興家を公園に呼び出したのでした。

 

半信半疑で探索を始めるヨーコを眺める興家でしたが、途中でヨーコの様子がおかしくなります。
興家の背後に指を差し、驚愕の表情を浮かべています。
興家が振り向くとそこには……

と、最序盤の展開はこのような流れで進みます。

 

ゲームとしては、主に画面内をクリックしたり、選択肢を選んで進めていくホラーミステリーアドベンチャーです。
『逆転裁判』シリーズなどのように、画面内の怪しい所をポインタで指定して探索をしていきます。
探索中は、視点を回転させて周囲を見回すことが必要で、これによって急に画面に変化が起きて驚くシーンもあります(まさに前述のヨーコが驚いているシーンのように)。
見えない怖さと、見えたときの変化を上手くホラーに利用している工夫が見られます。

また、ミステリーと銘打っているため、作中には謎解き要素があります。
ゲーム内で参照できる資料などから答えを推理し、解答を出さなければ先へ進めません。
作中でヒントは出されますが、中には思いもよらぬタイプの仕掛けが施されている場合もあり、それなりに閃きや柔軟性が求められます。

 

序章とも言えるエピソードをクリアすると、ここからが本編だと言わんばかりに、ストーリーチャートが解放されます。
ストーリーチャートでは、各登場人物別のエピソードが、シーンごとに時系列で並んでいます。
ある主人公の選択が他の主人公に影響を及ぼすこともあり、サウンドノベルゲーム『街』や『428』のようなザッピングシステムのようなプレイ感です。
一目でどこまで読んだのか把握できますし、やり残したことがあるシーンは明るいままで表示されるため、攻略の助けとなるでしょう。

ちなみにタイトルの「パラノマ」とは「paranormal(超常的な、心霊的な)」の略とされており、sight(場所、名所)と併せて「超常的な場所」のような意味になります。
視界が360度回転できるゲーム性で「パノラマサイト(広範囲な視界)」とも掛けているような気がします。

感想(ネタバレ無し)

複数の主人公の物語が程よく関わり合って物語が進んでいき、どの物語も先が気になる面白さでした。
特にストーリーチャートが解放されるまでの序章部分は、ジェットコースターのような怒涛の展開で、プレイし始めた人を強く引き付けること間違いなしです。
中盤以降は山場がありつつもやや落ち着いた展開で、探索アドベンチャーゲームの面白味が手堅く味わえました。

 

場所ごとの風景デザインは少しレトロな街並みが表現されており、昭和が舞台のゲーム内への程よく没頭できるプレイ感があります。
トゥーンシェードで表現されたキャラが、イラストのような豊かな表情そのままに存在しているのが感じ取れました。

BGMは非常に良く、ホラー調の曲のほか、探索中の哀愁帯びたメロディーなどが耳に残っています。
効果音や物音に奥行きが感じられるので、可能なら静かな環境もしくはイヤホンなどでプレイすると、より没入できると思います。

 

時折挿入される謎解きやギミックは、やや手こずる可能性があります。
作中に必ずヒントがあり、間違えてもやり直しは容易です。
間違えるたびにヒントも増えていったりしますが、難しければ自力で解くことにこだわらず。ネットで攻略情報を得ても良いかなと思います。
僕は一部、終盤の謎が難しかったので、攻略情報を閲覧しました。

探索パートでは、特定の場所を調べることが求められるのですが、時々調べるべき場所が分からず、詰まってしまうこともあると思います。
結構、見つけにくいポイントがあるように感じるので、その辺りは一定の注意力が要求されるような気がします。

何にせよ、この低価格で上質なホラーミステリーアドベンチャーを遊べるのは、かなりお得だと感じました。
プレイするか迷っている人は、ぜひプレイすることをオススメします。

感想・スクショを添えて(ネタバレ有り)

ここから先はネタバレがあるので、ゲームをクリアした人だけ見ることをお勧めします。
作中、強く記憶に残っているシーンを中心に感想等を好き勝手に書いていきます。

 

ヨーコは可愛いキャラで好きだったのですがほとんど出番なく残念でした。
最終的には、出番がない分、重要人物ではありましたが。
最序盤で、興家に対して脅かすような発言をしたりして面白いなと思っていました。

 

別の結末を知っているプレイヤーによって、興家に何となくライターを捨てさせたシーン。
利飛太に尾行させて、ライターを所持していることを把握して万全の準備で臨んでいるのに、「なんとなくそんな気になって」で策を台無しにされたらこんな顔にもなりますよね。
かわいそう。

 

真面目な表情が多い重要人物ミヲですが、褒められて(褒めていない)照れた表情が可愛かったのでスクショしてしまいました。
最初は黒幕だと疑っていたこともありましたが、ただの凄腕霊能捜査官でした。

 

あら^〜
約子は序盤から男性のような凛々しいイメージだったので、こっくりさん以降、少し大人しくなったのが気になっていました。
その後、白石さんの影響を受けていた知り納得しました。

 

姐さん呼びがあまりにもしっくりくる蝶澤さんです。
約子といい、奥田瞳といい、スケバン要素のあるキャラが多く珍しい作品だと感じます。

 

津詰&襟尾の刑事コンビは、こういったアドベンチャーゲームとは一番相性がよく、作品に馴染んでいたキャラクターでした。
漫才のようなやり取り、特に津詰のツッコミが面白く楽しめました。
「犯人はヤス」という古典にならって襟尾を疑っていましたが、特に黒幕ではありませんでした。
余談ですが、襟尾はこの若さで警視庁捜査一課に所属しているので、実はかなりエリートコースを歩んでいるのではと感じます。

 

マダムの最終盤での女同士の戦い。
この静かな探り合い・殺し合いという雰囲気が何とも言えず、良い空気感でした。
お互い良い表情で好きなシーンです。

 

おそらく利飛太はマダムに人を殺させたくないので積極的に助けることをしないのですが、それがマダムには意気地なしのように見えてしまうのでしょう。
もちろん、自分が死ぬのは嫌というのも嘘でないでしょう。
マダムを死なせたくない、人殺しもさせたくない、自分も死にたくない、人殺しの手伝いもしたくない、とバランスを取りつつ、何だかんだで自分が一番進めたい方向へ話を持っていくのが彼の有能なところだなと思います。

 

相手が呪主であるなら、ほぼ無条件で殺せる送り提灯は、確かにチート級の能力です。
ただ勝つだけなら無双できてしまいそうです。
本作は、結構強い能力が多いですが、これくらいの強さにしないとバトルが長引いてテンポが悪くなってしまいそうなので、結果的にはこれが良かったのだろうと思います。

 

前述したように、津詰のツッコミは面白いものが多く、ついスクショを撮りたくなってしまうシーンが多いです。
見た目はいかつく渋そうなベテラン刑事ですが、割と飄々と追及をかわしたり、妙なことに詳しかったりとキュートな一面が多く魅力的でした。

 

本作『パラノマサイト』は作中作であり、FILE23と銘打たれていることから、今後も別のシリーズが作られる可能性はあるでしょう。
ただ、本作のような呪殺デスゲーム能力バトルのような強烈な要素が付与されない限り、よくある探索ADVのようになってしまう可能性があります。
次はどのような要素でプレイヤーを惹きつけ、驚かせてくれるのか楽しみです。

そのほか、本ブログで紹介しているゲームをまとめた記事はこちらです。
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コメント

  1. 通りすがりのぼっち より:

    はじめまして。コメント失礼いたします。
    当方は去年からノベルゲームを制作している者です。
    制作に生かせそうな情報を求めて検索していたところ、losspass様のサイトに辿り着きました。

    どこかで見かけたゲームだなと思い、2 感想(ネタバレ無し)まで読ませていただきました。
    特に印象深かったのは、視界が360度回転できるという斬新な仕様についてです。
    脱出ゲームなど視点移動があるゲームはいくつか思い浮かびましたが、それとは一線を画す仕様っぽいぞ…と想像しました。

    losspass様の「見えない怖さと、見えたときの変化を上手くホラーに利用している」という文面からも、探索面だけでなくホラーミステリーを魅せる演出システムとして活用されていることが分かりました。
    当方は過去に漫画を描いたことがあるせいか、演出を考えるのが好きなので、自分もこういう演出をやってみたくなりました!

    また「視点を回転させて周囲を見回す」というプレイヤーのアクションをキーとして演出できるというのは、ゲームならではの利点だなとも思いました。
    受け身ではない能動的な演出になることで、ゲームへの没入感も強めることができそうですね…

    losspass様のおかげで、一石二鳥以上の仕様を知る事ができました。
    プレイイメージしやすい、とても参考になるレビュー記事を読ませていただき、本当にありがとうございました!

    • losspass より:

      コメントありがとうございます。
      急に音が出たり何かが出現するという演出は、驚かせ要素としてよくあるものですが、いずれも受動的なものです。
      本作での視点変更による画面変化で驚かせる仕組みは、こちらの能動的なアクションの結果によるものなので、新鮮な味わいがありました。
      何かのインスピレーションにお役に立てたのなら幸いです。