RPGツクールMV製の長編ダークファンタジーRPG『ライラといびつな信仰寓話』の紹介記事です。
製作者・脂肪ノ文庫氏の最初の作品とのことです。
キーワードは、ハードなストーリーと魅力的なキャラクター、そしてダイナミックな戦闘と豊富な寄り道&やり込み要素です。
本編クリア時間は約20時間でした。
ゲーム概要
とある田舎の村に住む少女ライラ・ティーザーが主人公です。
仲間と共に出かけた魔物退治から帰ってくると、村は悪魔の襲撃を受けて壊滅状態になっていました。
目の前で妹が殺され自身も瀕死の重傷を負ったライラですが、救助に来たセイントハイム教団員・アエトロたちに助けられます。
妹と村の復讐のため、ライラは悪魔を根絶やしにすることを誓って旅立つことになります。
本作は、オーソドックスなシステムのRPGです。
戦闘システムは伝統的なターン制のコマンドバトルで、敏捷が高い者から順に行動していきます。
MPを消費する魔法や必殺技の他に、ゲージを消費して放つ「奥義」があります。
奥義ゲージは戦闘中の行動によって溜まっていきますが、基本的には次の戦闘に持ち越すことはできません。
そのほか、キャラ同士で協力して発動する合体技などがあります。
ダンジョン等での戦闘は、ランダムエンカウントとシンボルエンカウントの併用という、少し珍しい方式です。
ランダムエンカウントでの戦闘の敵が一番弱く、シンボルの方が強めという印象です。
さらに敵シンボルも色によって強さが異なるため、危険な敵は避けていく必要があります。
そのダンジョンの到達時点では到底太刀打ちできないような敵も多いので、敵わない敵との戦闘は避けることが必要です。
本編とは直接関わりないサブイベントのダンジョンも存在し、余裕があるプレイヤーは寄り道の探索が楽しめると思います。
物語が進んでいくと、パーティーメンバーと交流を深めるイベントを起こすことができます。
これによって親交を深めていくことでもスキルを習得することがあります。
メンバーの組み合わせによってそれぞれイベントが豊富に用意されています。
キャラクターは経験値を得ることでレベルアップしていき、スキルを習得していきます。
他に、アイテムを使用することで習得できる汎用スキルも存在します。
感想(ネタバレ無し)
本編最後までクリアしました。
とても濃厚な内容のストーリーで楽しかったです。
「ダークファンタジー」と銘打っているだけあって、清廉なストーリーというわけではありません。
作品の随所で、怒り・憎しみ・欺瞞といった負のテーマを扱っているので、どちらかといえばハードな内容といえるでしょう。
そもそも主人公のライラが旅立つ理由というのが肉親を殺された復讐のためです。
明るく楽しい旅になるはずがありません。
しかもこのライラが喧嘩っ早く、大体の敵相手に「フーッ、フーッ」と鼻息を荒立たせます。
そのたびに敵と死闘を演じ、毎回ボロボロになりながら戦い抜いていきます。
ライラをはじめとして、どこかしら精神的に不安定な部分を抱えるキャラが多く、物語の序盤は不穏な雰囲気が漂います。
敵役がいちいち憎たらしいのも本作の特徴です。
まだ子供に過ぎないライラは、ずる賢い大人たちに口で敵うはずもなく、いつもやり込められてしまいます。
しかし最終的にはライラたちによって倒されるので、それはそれでプレイヤーにカタルシスを与えてくれます。
敵役への憎しみがどんどん蓄積されていく作品ですが、それが解放される場が必ず用意されているという点で、安心して我慢できると思います。
さて、ゲームの難易度としては、序盤は若干高めと言えるかもしれません。
実は、ボスで強いと感じた敵はそれほどいないのですが、通常の敵が手強く感じました。
ランダムエンカウントの敵<赤シンボルの敵<青シンボルの敵というように段階があるのですが、青シンボルの敵は下手なボスより強いのではと思います。
ただ、敵の強さは複雑なものではありません。
ある程度レベル上げを行なえばこちらがすぐ強くなるので、詰まったりすることは無いかと思います。
また、キャラに装備させる武器の種類によって色々な戦法が可能です。
一部スキルは自由に習得させることができるので、カスタマイズ性は高いと言えるでしょう。
比較的序盤からパーティ編成は可能になるので、プレイヤーが戦いやすい戦法を実現させることは容易です。
ストーリーと関係ない寄り道要素がそこそこあるため、プレイスタイルによって難易度の感じ方は変わってくるかもしれません。
後半は、敵も味方も強力な攻撃手段の応酬となるので、いい意味で大味でダイナミックな戦闘が楽しめると思います。
何にせよ本作の魅力は、テンポの良い強烈なストーリー展開と、その展開に屈しない主人公たち自身の魅力にあると思います。
気になった方は手に取ってみてはいかがでしょうか。
攻略メモ(ネタバレ注意)
基本、しっかりレベルを上げて装備を固め、強いスキルで戦えば詰まることはないと思います。
攻略時に有用と思った情報を記載していこうと思います。
全般的な攻略メモ
・食事の効果を活用する
酒場で料理を食べると、特定のパッシブスキルが付与されます。
これは新たに別の食事をしない限り永続的に続きます。
苦戦するようなら、見直してみると良いかもしれません。
後半は、迷ったら経験値が2倍になる食事で良いかと思います。
・飛行船内での交流
飛行船内では、パーティメンバーと交流を深め、強力なスキルを習得することができます。
ストーリーが進んだら必ずこまめにチャックしておきましょう。
パーティの先頭のキャラが飛行船内での操作ユニットとなるので、ライラ以外のキャラも操作して、全ての組み合わせで交流しておきましょう。
ライラとの組み合わせによる交流だけだと思っていたら、他の組み合わせ(アエトロ×メイルス等)でも交流できることに最終盤で気付きました。
6人のうち2人を組み合わるため15パターンあります。
・特に有用だと感じた技
連撃アイシクルスピア(ライラ):
ヒット数が多く、消費MPの割に総ダメージが高いです。
魔力をバフして、敵の魔防をデバフするとかなりのダメージになります。
ライトプロテクション(アエトロ):
強敵との戦闘開始時に使用すると、かなり安全度が高まります。
奥義の指輪を装備して奥義ポイントを引き継がせるようにしておくと、使いたいときに使えて便利です。
ハートグリッパー(メイルス):
単体攻撃ですが、即死効果が有用です。
単独で戦うシーンで役に立ちますし、HPが高い強敵などでも効果的に倒せます。
ストーリー攻略メモ(ほんの少しだけです)
・5章突入後
4章終了時に、本当に進めますかと確認が出るだけあって、しっかり育てていないと詰む可能性があります。
パーティーメンバーがそれぞれ手分けして単独で探索して戦う場面が続きます。
マップ上のあちこちに回復アイテムが散らばっているので、集めながらこまめにセーブして進んでいきましょう。
特にチズィーナは火力が低く、通常戦闘が非常に厳しいので避けるのが賢明です。
戦うのであれば、フィールドに落ちているロケットランチャーを使うのが良いですがお勧めは出来ません。
ボスのデズモンドは、ステータス異常による継続ダメージをメインで狙っていきましょう。
具体的には、「ローリングソーサー」「クロスブレード!」による出血多量と、奥義「風に秘められた痛み」をメインに攻撃していきましょう。
通常戦闘よりもデズモンドの方が戦いやすいと思います。
感想(ネタバレ有り)
この項目では、プレイ中印象深かったスクリーンショットを貼りながら、感想などを書いていきます。
ネタバレ要素が大きいので、プレイする前には見ないことをお勧めします。
本作のテキストは、親しいキャラ同士だと砕けた自然な言葉遣いなものが多いと感じます。
作者がキャラに言わせているのではなく、このキャラ自身から溢れてきた言葉だという印象を受けることが多かったです。
ゴルークに「識別ウィザードアイ」を使用したときのメッセージです。
相手の強大さが表現されていて怖かったです。
敵1体ごとにテキストが用意されていて、非常に作り込まれていると感じました。
初期のライラは、怒りで無理やり自らを奮い立たせているせいか、意見が違う相手にはどんどん噛みついていきます。
このせいでライラは喧嘩っ早いイメージが刷り込まれました。
中盤まではとにかく、この鼻息の荒さが印象的な狂犬ライラといった印象でした。
とにかく喧嘩っ早く、ダメージを受けても怒りと根性で敵を怯ませるという感じです。
ところで、因縁の相手であるゴルークとの決着が割と早くついたのは少し意外でした。
割と絶望感が大きかったガスパーベル組との初邂逅です。
ロノも怖い印象でしたが、後から彼は埋めてやっただけだと判明し、少し安心しました。
顔グラはよく見ると若く見えるのですが、口調と一人称のせいで不思議と違和感なくオッサンの顔に見えてきます。
こういう名も無いキャラも、個性を持った存在として生きているのが良いなと思います。
(後に署名を集めるイベントで、名前があるのが判明するわけですが)
ストーカーに対しては、このようにはっきり拒絶するのが有効です。
しかし状況によっては逆上され、犯罪被害に繋がることもあるため注意しましょう。
よく見るとサラは凄い恰好していますが、体温が高いという設定があるようなので、露出癖があるというわけではないようです。
ストーリー上では、非常に強大な存在感を持っていたナナでしたが、実際の戦闘ではそれほど苦戦はしませんでした。
それはそれとして、力で支配していたキャラが主人公たちに負けた後、ちゃんと自分のルールを守るのは潔くて好きです。
博士はパワーストーンを全部集めたら裏切って来るタイプの敵役だと思っていました。
最後まで警戒していたのですが、全然そんなことはありませんでした。
それどころかパウリーといい感じの仲になってめでたしめでたし。
なぜか一目で裏がある人物だと分かるのが凄いと思います。
神父というキャラは大抵裏があるような気がします。
ヘルガはなかなか煽り力が高いセリフをスパッと言ってくれるので、プレイヤーとしては気持ちが良いです。
ヘルガ兄貴と呼ばせていただきたいのですが、ちゃんと女性らしい一面があるので侮れません。
パーティの精神的支柱の二人は色々と苦労が多そうです。
自分のイメージでは、母がパウリー、父がヘルガ、長女がメイルス、次女がアエトロ、三女ライラ、四女チズィーナという印象です。
年齢的にはアエトロの方がメイルスより上のようです。
メイルスは仲間のためなら、敵にどこまでも冷酷になれるのは頼れる姉という感じがします。
ヴァングラム編以降は心の余裕がなくなり、なかなかこういったシーンを見ることがなくなってきました。
自分のことでいっぱいいっぱいなので、他人のために冷酷になれる余裕がなかったのかもしれません。
エヴァイスは敵役として憎たらしく、プレイヤーの感情を上げ下げしてきます。
彼のおかげで、ストーリーに凄くメリハリが出ていると思います。
愛すべき悪役と言っても良いかもしれません。
この自虐があるからこそ、覚醒したときの姿が際立ちます。
『ただのアエトロです』というセリフが、とても格好良くて好きです。
セイントハイム教から離れて、ようやく自分のアイデンティティが確立した感があります。
顔グラもキリっとして、以前のやや世間知らずの可愛いものではなく、凛々しい表情になっています。
「そんなんアリ!?」と思いましたが、ルールだから仕方ありません。
ここだけ何だか上手く丸め込まれたような感がありますが、とりあえず世界の危機を救ったので良しとしましょう。
この技、ラスボスには効かないのでしょうか。
ライラの中二的なネーミングセンスへのツッコミです。
確かにそうか、と妙に納得してしまいました。
博士に続いて、これ絶対後でラスボスになる奴じゃん…と思ったのですが、全くそんなことはありませんでした。
死者の蘇生という、絶対に良くない代償がありそうな魔法も特に問題なく、ハッピーエンドの材料となっただけでした。
僕がひねくれた考え方になり過ぎていたのかもしれません。
アヤカの登場により、ランソリアが「異常者」から「変人」に上方修正されました。
ランソリアは色々と分かっている上で、敢えてああいう言動をしていそうな感じがするのですが、アヤカは全部本気感があるのが怖いです。
そうなってしまった事情があるのは哀れだとは思います。
パウリーは大声を出しているシーンが多い印象ですが、感情的に怒りを伴っていない場合がほとんどだと思います。
このシーンはそんなパウリーでも、さすがに我慢ならないのが窺えるシーンだったので印象的でした。
ライラとアエトロ考案の「かっこいい」技名を受けてのツッコミです。
ヘルガはちゃんと丁寧に突っ込んでくれるのが真面目で良いですよね。
ちょくちょくメタっぽいネタを恐れずに入れ込んでくるのは本作の思い切りの良さだと思います。
別のシーンですが、ヘルガ兄貴のツッコミホント好きです。
何ページにも渡ってしっかり的確にツッコんでくれるので、やはり真面目に内容を読んだ上で言っているのがよくわかります。
ライラのこういう正直なところは好感が持てます。
あれは結構ひどい仕打ちでしたし、思い出して怒りがこみあげてくるのはよくわかります。
子どもに言い聞かせるようなパウリーの注意に笑いました。
ダンジョンの仕掛けに対しての救済措置(メイルスで破壊)が用意されているのはありがたかったです。
なるべく正規の手順で仕掛けを解こうとしましたが、アイテム集めに手間がかかる場所ではメイルスに頼りました。
自分の場合、結局4つの名前しか集められませんでした。
(アンドレ、デイヴ、珠ちゃん、ジェイムズ)
これでHARDということは、さすがにもう少しいるんだろうなと想像します。
メイルスの馬鹿力は、『呪術廻戦』の「天与呪縛」のようなものだと勝手に解釈してます。
本来持つはずだった魔力の分だけフィジカルな部分での才を持ったのでしょう。
ヴァングラムで食べられる「ミノタウロステーキ」は最後まで役立ちました。
経験値が2倍というのはシンプルに役立ちます。
これのお陰もあって、あまり経験値稼ぎをした記憶はありません。
このシーンのエヴァイスのセリフは、滅茶苦茶好きなセリフの一つです。
確かに、悪役が主人公の復讐のために旅に出ることもあるよな、と素直に感心しました。
主人公であるライラ自身が復讐のため旅立っているわけですから、何らおかしいことではありません。
もっとも、エヴァイスの場合は逆恨みのようなものなので同情はできませんが。
ジョジョの敵役が言いそうなセリフで、エヴァイスの上機嫌な様子が凄く伝わってきて心を揺さぶられました。
本作のキャラが喋る言葉は、敵でも味方でも心を揺さぶられることが多いです。
生きた言葉を喋っているという感じがします。
ヘルガがお姉さん口調で喋る超貴重なシーンです。
このシーンは不意打ちだったので不覚にもドキッとしました。
かなりシリアスで熱いシーンなのですが、不覚にも笑ってしまいました。
かなり強キャラ感があったベルベラを倒すシーンは、熱いものがありました。
多くのプレイヤーは、胸がスッとしたのではないでしょうか。
パウリーよくやった、と心から思いました。
エヴァイスですら引かせる変態、それがランソリアという男です。
かつて敵だったキャラたちが一気にプレイアブルキャラに変わる展開が非常に熱く、プレイの止め時がありません。
引くというか、憐憫すら覚えられていそうなデイブの戦い方の評です。
実際、200歳生きていてこの精神性は凄いと思います。
「虫ケラ」呼ばわりはさすがに笑いました。
ボコボコして溜飲が下がりましたが、さすがにエヴァイスがちょっとかわいそうになってきました。
エヴァイスをボコボコにするのがライラたちではなく、立ち位置がやや違うナナだという点の役割分担が絶妙だと感じました。
時を喰う化け物だけあって、ラヴォスみがある外見です。
ここに来てようやく最後に倒すべき共通の敵が現れたという印象です。
前にも書きましたが、こういう名前がないモブにも個を感じさせるセリフがあるのが好きです。
特別なキャラではない一般兵ですら叱れるほど、アヤカが精神的に未成熟だということが印象付けられるシーンでした。
とんでもない変態のイメージのランソリアでしたが、植物関係に関しては真摯さが伝わってくるので株がどんどん上がっていきました。
こんな旨い話はない、絶対何か裏があるはず、大きな代償があるはず、と思っていた時期がありました。
しかしミスティフが裏切るという展開は無く、犠牲者が問題なく生き返るというハッピーな結末でした。
最終戦パーティの平均レベルは99でした。
特にレベル上限開放要素などをこなしていないですが撃破できました。
最終戦は、ボスの再生能力が高かったので若干苦戦しましたが、ライラの火力を軸に押し切った形です。
最初は、なんてダークなファンタジーなんだと思いましたが、後半から終盤にかけてどんどん希望が見えるようになってくる展開で新鮮でした。
割と最初は普通で、後半へ向かってしんどくなっていく物語が多い気がする中、明るい気持ちでスッキリ終えられたのは珍しいように感じます。
このシーンは、ジョジョ3部ラストの、空港でのやり取りを思い出しました。
辛いことも多い作品でしたが、ライラやみんながいたから楽しむことができたのだと思います。
面白い作品をありがとうございました。
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