RPGツクール2000製のRPG『ANT』の紹介記事です。
本ブログでも紹介した『Qualia-盲唖の歌姫-』『QualiaNext-道を照らして-』と同じ製作者すぎやん氏による作品です。
これまでの作品の流れを汲むサイバーパンクな雰囲気が魅力です。
本編のクリア時間は約12時間でした。
ゲーム概要(ネタバレ無し)
主人公は、『生這技研』(せいばいぎけん)という会社によって生み出された重ミュータントの少女・アズミラです。
見た目は可愛らしい博多弁の少女ですが、バトルモードに変異すると怪物のような戦闘力を発揮します。
出世して自らの希望を叶えるため、会社から与えられた様々な業務をこなしていきます。
物語が進むにつれて、自らの出自と関わる事件の渦中に飛び込んでいくことになります。
戦闘は、主にシンボルエンカウント方式によって発生します。
行動ゲージが満タンになったキャラからコマンドを選択して行動できるようになっていきます。
通常攻撃やスキルによって射程が異なるため、移動したり向きを変えたりして、有利な位置をとることで楽に戦えます。
移動は一次元的な方向に限られ、前か後ろに移動できるのみです。
戦闘画面での上下の位置関係は関係ありません。
移動・方向転換のセットで1回の行動にカウントされますが、行動ゲージの消費は半分だけなので、他の行動に比べ、次回の行動順は早く回ってきます。
位置関係で一番重要なポイントは、敵の背後から攻撃するとクリティカルになるということです。
向かい合って殴り合うだけでも勝つことはできますが、ポジショニングを意識して戦うことで効率よく戦っていけるでしょう。
数的・位置的な優位性がしっかりと反映される戦闘システムだと思います。
挟み撃ち状態にすれば、背後から攻撃することも楽でしょう。
主人公のアズミラは、経験値を得ただけでは成長していきません。
経験値を割り振ることによって強くなっていきます。
スキルを習得させるのか、ステータスをアップさせるのか、育て方はプレイヤーの自由です。
様々な戦い方が可能なシステムなので、色々と試してみるのが面白いです。
物語は、第一話、第二話…というように続いていき、ある程度のまとまりで区切られています。
ゲームが進んでいくにつれ、少しずつシリアス度が上がり、大きな事件につながっていきます。
本作では、個性的な登場人物が物語を大いに盛り上げます。
主人公のアズミラも博多弁でインパクトがありますが、その他、胡散臭いが憎めないジャーナリストのジョルダンや、尊大な口調で話す正義の不審者ビー・ビーなど、多くのキャラが登場します。
クセのあるキャラ同士の掛け合いを見ているだけで面白く、プレイヤーを作中に引き込んでいくことでしょう。
感想(ネタバレ無し)
無事に最後まで無事クリアすることができました。
戦闘の難易度としては、やや易しめという印象です(クリア後のボスは除く)。
これは簡単だという意味ではありませんが、準備さえ整えれば苦労せずに突破できるという意味です。
そして準備自体そう大変ではなく、回復アイテムを多めに買っていけばある程度ゴリ押しできます。
わざわざお金と経験値のために戦闘で稼ぎを行う必要性はなく、普通に戦う戦闘で、問題なくお金は貯まっていくと思います。
初回のプレイでも、全滅することは一度もありませんでした。
ただ雑魚敵相手の戦闘でも、ずっとボタン連打をして倒せるという類のものではないので、戦闘に掛かる時間は若干多めかもしれません。
パーティメンバーは、ストーリーの進行に応じて変わっていきます。
終盤で自由に編成できるタイミングはありますが、基本、物語の進行によってメンバーは固定されています。
様々な戦闘メンバーがいるので、各メンバーの特徴を把握し、役割を意識して運用していくことが求められます。
グラフィックは、ツクールらしいドット絵の妙が感じられるレトロな味があります。
マップチップも本作のために作られたであろうと思われるものが多く、ノスタルジックかつサイバーな雰囲気を創り出しています。
時折挿入される迫力のある一枚絵もあり、格好良いです。
そしてなんといってもBGMが素晴らしいです。
これまでの作品と同様、ぬまたろう氏が楽曲を手掛けています。
通常時はもちろん戦闘BGMも数多く、各シーンを盛り上げていることは間違いありません。
同梱のread meにも書いてありますが、デフォルトのmidi設定ではなく、「VirtualMIDISynth」「SGM-V2.01」に環境を整えることをお勧めします。
重苦しく陰鬱としているというわけではないので、それほど身構えずにプレイできると思います。
物語はテンポ良く展開していく印象です。
伏線の数も適度な範囲で、ゲームというよりは洋画や海外ドラマのような印象を受けました。
芝居がかかったセリフ回しが多めなので、そこにノって楽しめるプレイヤーであれば最後まで盛り上がったまま楽しんでいけると思います。
クリア後の感想(ネタバレ注意)
ちなみに本編クリア後、訓練場の主任に会いに行くと、更なる隠しダンジョンと裏ボスに挑むことができます。
腕に覚えがある人はチャレンジしてみてください。
ここから下はネタバレ込みで、印象に残っているシーンについて、スクショと共に語っていこうと思います。
序盤に少し不穏なセリフが出てきて、自分の会社と戦っていく展開になるのかなと思っていたのですが、そんなことはありませんでした。
結局、生這技研の社員さんたちはみんないい人ばかりでほっとしました。
ゲームのダウンロードサイトには「社畜昆虫が街を征くコミカルB級バイオパンクス中編RPG」と銘打たれていましたが、それほど社畜要素は感じませんでした。
アズミラは出世を目指してお仕事を頑張りますが、彼女の性格もあってか社畜的な悲愴感はありません。
会社勤めのアズミラより、むしろ他のアウトローたちの方が、色々なしがらみによって束縛されているように感じます。
ビー・ビーは好きなキャラの一人です。
大仰で尊大な喋り方で癖は強いですが、意外と柔軟な思考を持っているところが素敵です。
ザメジ組長からは「狂人だが教主としてのカリスマはあった」と評される興味深いキャラです。
戦闘ではタフな前衛ですが、敏捷が低く行動が遅いのが難点です。
集中を使ってから使いたいスキルが多いのに、行動順を浪費したくないジレンマがあるため、集中を使いづらいという難しいキャラです。
(ver1.03以降では、常在スキルによって集中が不要になり使い勝手が向上しています)
何かにつけ昔の話を始めるメイソン達を皮肉るジョルダン。
この皮肉の言い回しが好きだったのでスクショしました。
ジョルダンのこういうセリフが好きなので、彼が他のキャラと絡むのを見ているのが楽しいです。
戦闘では長射程の単体攻撃・範囲攻撃が共に揃っており、かなり使いやすい印象でした。
戦闘開始時に銃を回すガンプレイがカッコいいです。
カッコいいからという理由で練習したんだろうなと想像してしまいます。
見た目からしてビー・ビーは教団関係者なんだろうな~からの、やっぱりお前かという展開でした。
敵陣の奥深くなのに、空気が一気に弛緩するのが感じられる瞬間でした。
あらゆる面で優位な状況にある生這技研に対してのジョルダンの心の声です。
優位にあるからこそ、向こうは策を弄する必要もなくストレートに来ます。
自分の武器でもある口八丁の弱点をちゃんとわかっている感じが好きです。
アズミラの博多弁のルーツが初めてわかるワンシーンでした。
この段階では、まさか母娘関係にあるとまでは思っていませんでした。
アズミラの小さい頃からシエルが面倒を見ていたのかな、程度の認識でした。
自分と真逆のタイプであるソルベッタと同じ負け惜しみを言っていたことを指摘されたスケアクロウの一枚です。
彼が驚くシーンは作中でも数少ないので、何となく印象に強く残っていました。
狭い小部屋に入った瞬間、エンカウントしたときのスクショです。
近距離で急に遭遇したというシチュエーションが戦闘での位置関係で表現されており、面白いなと思います。
娘に対する悪い情報はスルーしてしまっているグレンゾォに対するビー・ビーのツッコミです。
本作ではビー・ビーがツッコまれることが非常に多く、彼自身が他人にツッコむの凄く珍しい気がします。
ビー・ビー自身は意識的に都合の悪い情報をシャットダウンしていそうですが、グレンゾォは無意識的にやっていそうなので、よりタチが悪い気がします。
『AKIRA』のアキラのような得体のしれない存在だったエディが、敵ではないということでホッとしたシーンです。
最後、一人で起動エレベータに乗るアズミラの所へ瞬間移動してきたときは、実はこのあと裏切るのではと思っていましたが、そんなことはなく良かったです。
主人公的なポジションで狂言回しをしていたジョルダンですが、最後は主役のアズミラに爽やかに部隊を譲ります。
『Quallia』のリッカーマンとスレアを見ているかのようでした。
(呼び方も「嬢ちゃん」で同じです)
本ブログで紹介しているゲーム系の記事まとめ
コメント
ヒャッハー! 待ちに待ったANTの記事じゃあー!
博多弁女子はかわいい、そんな作品でしたね(情報汚染済み) 先輩っぽく振る舞いたいのに中々出来ないフィーナ、付き合いは良いけど結局ゲーム通して住処も暮らしも描写されないクレンシア、イタマエ=サムライ=ニンジャなゴドー、癖のない好青年に育ちそうなナギ。 みんなすこ
BGMはチープなのが好きなのでそのままプレイしてましたが、アップデートもあったし過去作網羅したら適用して再プレイしようかしら……
クレンシア、確かに運び屋ということ以外はプライベートが謎ですね。
実は諜報機関のエージェントだったとしてもおかしくないのかもしれません。
今回、登場人物については断片的にしか語っていませんが、ゴドーも好きでした。
29歳という年齢を少し気にしているらしい描写もあって少し可愛かった印象です。
どこかで見たような記号的なキャラは少なく、個性溢れる登場人物たちが動いているのを見るのは楽しかったですね。